【SUPER FORMULA 第9戦 / 鈴鹿サーキット】

太田格之進選手が前戦に続き鈴鹿2連勝を達成、2戦連続2位の坪井翔選手が自身初のドライバーズタイトルを獲得!!

SUPER FORMULA Round 9

開催日 2024年11月10日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 公式予選 : 曇り
決勝 : 曇り
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝周回数 31周
(1周=5,807m)
参加台数 21台
※タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク

前日11月9日(土)に第8戦を終えた2024年の「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」は、いよいよシーズンの集大成となる第9戦を迎えた。最終戦を前に、ランキングトップの坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)と2位の牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とのポイント差は18.5。坪井選手が予選でトップ2に入った場合、牧野選手の結果次第では決勝レースを待たずに坪井選手の初戴冠が決定するポイント差だ。

第8戦の決勝トップ3記者会見に出席した2人は、「ポイント差はありますが、レースはチェッカーを受けるまで何が起きるか分からない。油断した瞬間に何かが起きると思います。絶対に気を抜かずに、優勝を目指して頑張るだけです。そう心がけていれば、おのずとチャンピオンがついてくると思っています」(坪井選手)、「逆転チャンピオンをあきらめてはいません。レースは最後まで何があるか分からないというのは身をもって経験しているので、最後まで全開でプッシュしていきます」(牧野選手)と語っていた。

かくして迎えた9時15分からの公式予選、まずは牧野選手がQ1のA組に登場する。トップタイムは、このレースをもって国内トップ・フォーミュラからの卒業を発表していた山本尚貴選手(PONOS NAKAJIMA RACING)。牧野選手は山本選手に続く2位でQ1を突破した。

対する坪井選手はB組でトップタイム通過。Q2にはチャンピオンをかけた2人が揃ったが、セクター3区間で全体ベストタイムを刻み3番グリッドを確保するスピードを見せた坪井選手に対し、牧野選手は10番手に。ポイント差を埋めるには厳しいスタート位置となってしまう。

ポールポジションを奪ったのは野尻智紀選手(TEAM MUGEN)で、今シーズン2回目の獲得。第8戦で連覇への権利を失ったものの、3回のチャンピオン経験者がその意地とプライドを示した形だ。フロントローにはその第8戦で自身初のポール・トゥ・ウィンを達成した太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が並んだ。

公式予選から約4時間半で決勝レースがスタート、ポールシッターの野尻選手はやや加速が鈍ったか、太田選手が先行して1コーナーへ入っていく。野尻選手の後ろには3番グリッドの坪井選手がつけ、さらに5番グリッドから好スタートを切った福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)が続いた。野尻選手は序盤のペースが上がらず、2周目に入った1コーナーでは坪井選手にかわされてしまう。シケインでも福住選手のオーバーテイクを許し、この周だけで4番手まで後退することとなった。

先頭に立った太田選手はオープニングラップからハイペースで後続を突き放し、7周目には5秒のマージンを築くと、12周を終えるところでピットイン。1周前にピットに入った坪井選手のアンダーカットを阻止するのが狙いだったが、5秒のマージンも手伝って、太田選手は事実上のトップをキープしたままコース復帰に成功した。

まだタイヤが冷えているアウトラップの間に坪井選手が急接近し、スプーンカーブではサイドバイサイドの状態に持ち込まれたが、太田選手はオーバーテイクシステム(OTS)を使ってポジションを死守。オーバーテイクポイントの1つであるシケインも守り切って、見た目上5番手、事実上トップの座を明け渡すことなくアウトラップを終え、ファステストラップを更新するスピードで太田選手に迫った坪井選手だったが、最大のチャンスをものにすることはできなかった。

タイヤに熱が入った太田選手は、ここからペースアップ。レース序盤の再現かの様に坪井選手との差をじわじわと拡げていく。22周目に最後の1台がタイヤ交換に向かい、見た目上でもトップに返り咲くと、最後までペースを緩めることなく周回。再び5秒の差を築いて今週2度目のトップチェッカーを受けた。

このレースで2ポイントを加算できれば自力でシリーズタイトル獲得が決定する坪井選手は、13周目に訪れた逆転のチャンスを逃した後は、無理にトップを追うというチャレンジを選ばずに2位をキープ。1秒後ろに迫る福住選手をマークしながらの終盤となった。最後まで安定したペースを崩さず31周を走り切り、2位でチェッカー。この結果、SUPER FORMULA参戦6年目にして悲願のシリーズチャンピオンを確定させた。

3位は福住選手で、今季2度目の表彰台獲得。ポールポジションからスタートしたものの序盤に順位を下げてしまった野尻選手は後半に挽回を見せ、4位に入っている。

10番手スタートから逆転タイトルを目指した牧野選手は、オープニングラップで1つポジションを上げることはできたものの、前を行く笹原右京選手(VANTELIN TEAM TOM’S)をオーバーテイクするのに苦戦。ミニマムでのタイヤ交換作戦を採った笹原選手が10周目にピットインすると、これに反応して翌周にタイヤ交換に向かった。

チームは素早い作業で牧野選手を送り出し、ピット作業で笹原選手を逆転することに成功。アウトラップでタイヤが冷えている間に再び先行されてしまうが、15周目のホームストレートで並びかけ、コーナーでアウト側から豪快なオーバーテイクを披露。スタート直後から苦しめられていた笹原選手の扉をようやくこじ開けると、全車のピット作業が終わった段階で7番手までポジションを取り戻していた。終盤は、6番手を走る山本選手と11番手スタートから同じようにポジションを上げてきた岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)とともに3台でのバトルを展開し、最後は8位でチェッカー。最終戦での大逆転は叶わず、ポイント差がわずかだった野尻選手が4位でフィニッシュしたため、最終的にはランキング3位となった。

それでもこの2連戦で太田選手とともに大量ポイントを得た結果、シリーズランキングのチーム部門ではDOCOMO TEAM DANDELION RACINGがタイトルを確定した。ルーキー・オブ・ザ・イヤーは表彰台に3度上がり、シリーズランキングでも5位となった岩佐選手が獲得した。

山本選手は国内トップ・フォーミュラでのラストレースを6位でフィニッシュ。セレモニーでは後輩たちへのエールとともに、温かい応援をくれたファン、自らをサポートしてくれたチームやメーカースタッフへの感謝の言葉を送り、15年戦い続けた国内トップ・フォーミュラに別れを告げた。

Drivers’ Voices

太田格之進 選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

【今回の成績 : 優勝】

今日も絶対に勝ってやるという気持ちでスタートし、1コーナーでトップの選手に並んでも絶対に引かないぞと決めていました。スタートで僕の方が加速が良くて、自分が望む展開にできましたし、第8戦同様にクルマも非常に素晴らしかったので、何の文句もないレースになりました。悔しい残念なレースもありましたが、最後に2連勝ができていいシーズンの締めくくりができたと思っています。

坪井 翔 選手 (VANTELIN TEAM TOM’S)

【今回の成績 : 準優勝 (シリーズチャンピオン確定)】

ずっと獲りたくて仕方がなかったSUPER FORMULAのドライバーズタイトルを、ようやく獲ることができました。今は最高の気持ちです。今年はチーム移籍という大きな環境の変化があったので、送り出してくれたチームにも迎え入れてくれたチームにも恩返しをするには結果を出すしかないと思っていました。いつも以上に気合が入った1年だったので、その年にチャンピオンが獲れて本当に良かったです。SUPER FORMULAは同じクルマと同じタイヤを使って戦う『日本最速』を決めるカテゴリーだと思っています。やっぱりその称号は欲しかったので、本当に幸せです。

Engineer’s Voice

坂入将太 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ]

今シーズンは3月の上旬に鈴鹿で開幕をし最終戦の鈴鹿も11月開催となり、これまでよりも寒い中でのレースがある一方で、8月のもてぎ大会は猛暑の影響もあり過去最高に高い気温の中でのレースでした。また雨の菅生大会はタイヤメーカーとして新たな課題が見つかったレースでもありました。通年、ドライ・ウエット各1スペックのタイヤ供給をするものとして、広い温度レンジやさまざまな天候に対応できることの重要性を改めて実感したシーズンでした。

今シーズンもタイヤサプライヤーとしてスーパーフォーミュラの足元を支えることができたことを、光栄に思っています。

現在我々がシーズンを通して供給しているサステナブルタイヤは、性能を維持したまま、再生可能原料やリサイクル原料の比率を向上させたタイヤで、その比率は既に33%を達成しています。富士大会で近藤会長にテストランしていただいたタイヤでは、シーズン通しての投入にはまだ課題があるものの、すでに60%という比率を達成できております。現在開発中のタイヤの中にはサステナブルタイヤとしてより進化させた実戦投入可能なレベルの仕様も確認できています。再生可能原料・リサイクル原料比率の向上は大きな課題としてこれからも続けてまいりますが、今後は比率向上を継続しながら性能もらさに向上というところに注力をして、開発をしていきたいと考えています。

Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)

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