【SUPER FORMULA 第5戦 / モビリティリゾートもてぎ】

太田格之進選手がレースをリードするも残り2周でまさかの展開となり、牧野任祐選手がシーズン2勝目を挙げた!!

SUPER FORMULA Round 5

開催日 2024年8月24日-25日
開催場所 モビリティリゾートもてぎ
(栃木県)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝周回数 37周
(1周=4,801m)
参加台数 21台
※タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク

「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の第5戦が、栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催された。全7大会、9戦で争われる今シーズンのSUPER FORMULAも後半戦に突入し、チャンピオン争いにも注目が集まるようになる。

第4戦を終えて、2021年、22年と連覇を果たした野尻智紀選手(TEAM MUGEN)がランキングトップにつけ、9.5ポイント差で坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)が追いかけている。3番手には野尻選手から14ポイント差で牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が入っていて、今シーズンのウィナー3名がトップ3を占めている状況だ。

シーズンは折り返しを迎え、今大会を含めて残りは5戦。そのうち第6大会の富士ラウンドと第7大会の鈴鹿ラウンドは2レース制のフォーマットを採用しているため、週末の主役に躍り出れば一気に大量ポイント獲得も可能で、まだまだシリーズチャンピオンの行方は分からない状況だ。少しでも有利な位置で終盤戦に臨むべく、どのドライバーにとっても今大会は重要な1戦となる。

25日に、公式予選前のフリー走行で速さを見せたのは山下健太選手(KONDO RACING)。今シーズンはここまで4戦すべてでQ2進出に成功しており、予選では上位争いに加わっている1人だ。ここに、佐藤蓮選手、山本尚貴選手と今シーズン調子の上がってきているPONOS NAKAJIMA RACINGの2人が続き、大湯都史樹選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、牧野選手、福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)と、ポールポジション争い常連がトップ6に並ぶ。7位につけた太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と山下選手のタイム差はわずか0.36秒で、今大会の予選もし烈を極めることが予想された。

公式予選は通常通りのノックアウト方式。まずはQ1のA組からセッションがスタートした。このセッションでトップタイムを奪ったのは太田選手。フリー走行トップだった山下選手は0.273秒差で2位につけた。以下、大湯選手、坪井選手、佐藤選手、国本雄資選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)までの6名がQ2に進出。第2戦オートポリス大会でポールポジションを獲得し、そこから3戦連続で予選トップ3につけていた岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)はその速さを見せられず、国本選手にわずか0.002秒届かず7位でQ2進出はならなかった。

続くQ1B組は牧野選手がトップタイムをマークし、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGが両セッションでトップを奪う速さを見せることに。野尻選手、福住選手、山本選手、阪口晴南選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、小高一斗選手(KONDO RACING)までの6名がQ2に駒を進めることとなった。なお、今大会はITOCHU ENEX TEAM IMPULの19号車のドライバーとして世界耐久選手権で活躍するニック・デ・フリース選手がエントリー。十分な練習期間もない中で急遽の参戦となり、この予選はQ1B組で9位という結果になった。

迎えたQ2は、コースインしてからウォームアップラップを挟んでアタックに入る車両が大半を占める中、コースインの翌周にいきなりアタックに入る作戦を採った福住選手を先頭に、ポールポジション争いが始まった。

「フリー走行での結果や手ごたえ、午後に向けて気温や路面温度が上がることを考えて、ややギャンブル的な作戦を採った」と福住選手は予選後に振り返っているが、その福住選手がマークした1分32秒379というターゲットタイムを、後からコントロールラインに戻ってくる選手が次々と塗り替えていく。まずは野尻選手が1分32秒151で逆転すると、大湯選手が1分32秒091でさらに更新。そして山下健太選手が唯一の1分31秒台となる1分31秒995にタイムを入れて、トップに躍り出た。最後に太田選手が1分32秒074で2番手に滑り込み、セッション終了。

フリー走行からの勢いをキープした山下選手が、実に7年ぶり2度目となるポールポジションを獲得した。2位の太田選手は、山下選手とは0.079秒差。3位の大湯選手は0.09秒差と、トップ3のタイム差は0.1秒もないほどで、予想通りの僅差の戦いとなった。4位には出身地が近くもてぎをホームコースとする野尻選手が入り、以下、牧野選手、栃木出身でこちらももてぎがホームコースの山本選手というトップ6になった。

25日の公式予選終了後、太陽が沈んだ後のモビリティリゾートもてぎは強い雷雨に見舞われた。だが幸いに夜半には雨も落ち着き、路面も乾いた状態で決勝日となる26日を迎えた。わずかに雨が落ちてきたことで朝一番のフリー走行はウエット宣言が出されたものの、路面を濡らすまでは行かず、各車がドライタイヤを装着して午後の決勝に向けた最終確認を行っていった。

決勝レースがスタートした14時40分の時点で、気温は33度、路面温度は37度を記録。路面温度が50度まで上がった前戦・富士大会に比べれば、やや温度は落ち着いているものの、オーバルコースに囲まれて熱気が逃げにくいもてぎ特有の蒸し暑さの中、37周にわたる決勝レースがスタートした。

1列目に並んだ山下選手と太田選手はポジション通りに1コーナーを通過し、5番グリッドから抜群のスタートを切った牧野選手がその後ろに迫る。オープニングラップは山下選手、太田選手、牧野選手、大湯選手、野尻選手、スタートで1ポジションアップした小高選手というトップ6。まだスタート直後で混戦状態ではあったものの大きな順位変動なく序盤は過ぎていき、レースはタイヤ交換が可能となる10周目を迎えた。

ここでいち早く動いたのは、山下選手を追いかける立場の太田選手と大湯選手。2台は10周目を終えるところでピットに向かい、太田選手、大湯選手の順でピットアウト。太田選手はコース復帰した直後の1コーナーでコースからはみ出てしまう場面もあったが、何とか踏みとどまるとそこから怒涛の追い上げを見せていった。ターゲットは山下選手で、相手がピットインしている間に逆転するべく、フレッシュタイヤを武器にどんどんとギャップを削っていった。

山下選手はトップの位置はキープしているもののあまりペースは良くなく、むしろ牧野選手にじわじわと迫られている状態だった。ただ前半でタイヤ交換をしてしまうと、レースの終盤にタイヤが消耗してペースダウンを余儀なくされることは明らかで、それを避けるためには前半スティントを1周でも伸ばしておきたいところ。山下選手、牧野選手、そして野尻選手の3人はレース後半でのタイヤ交換を選択し、後続とのギャップを拡げるべくプッシュしていった。

その3台の中では、牧野選手が最初にピットイン。22周を終えたところでピットロードへと舵を切ると、牧野選手のアンダーカットを防ごうと山下選手が翌周ピットイン。野尻選手もこれに合わせて同時にピットへと向かった。すでに太田選手はトップに浮上し、山下選手のターゲットは牧野選手に移っていた。チームはミスのない動きで山下選手をコースへと送り出したが、牧野選手のアウトラップが速く、コースに戻った瞬間に山下選手は牧野選手にかわされてしまう。さらに大湯選手の先行も許し、山下選手は4位まで後退してしまった。

これで全車がピット作業を済ませ、太田選手が堂々のトップに浮上。2位の牧野選手とは10秒の差が広がっており、残り周回数を考えても太田選手の自身2勝目はほぼ確実に思われた。しかし、タイヤ交換したばかりの牧野選手が一気にペースアップ。

モビリティリゾートもてぎは直角に近い低速コーナーと直線を結んだようなレイアウトのサーキットのため、アクセル全開で駆け抜けていくような高速コーナーでタイヤにかかってくるような負担はないものの、コーナリングでいったん落とした速度をいち早く戻すためにもタイヤも含めた車両全体でトラクション性能が重要となるが、タイヤを履き替えたばかりの牧野選手の車両は太田選手に比べてトラクション性能が高い状態にあった。

1分37秒台のラップタイムを並べていた太田選手に対し、24周目には1分35秒234、25周目には1分36秒054と、1周1秒以上速いペースでぐいぐいと追いついていく。34周目を終えたコントロールラインではついにその差が1秒を切り、残り3周でチームメイト同士によるテール・トゥ・ノーズの争いが幕を開けた。

35周目に入り、時折ラインを変えて、太田選手のミラーに自分の姿を映してミスを誘う牧野選手。ただ太田選手もそれに動じることなく応戦する。S字コーナーで太田選手のサイドを伺った牧野選手は続くヘアピンコーナーで一気に横に並びかけた。太田選手は冷静にクロスラインを取ってポジションを死守。ダウンヒルストレートでは太田選手が前、牧野選手が後ろという位置関係は変わらず、2台は0.5秒差で36周目に入っていった。

テール・トゥ・ノーズの状態は変わらず、2台は同じように90度コーナーへと入っていくが、ここで太田選手のマシンが急に挙動を乱しスピン。牧野選手は目の前で起きたアクシデントをとっさの判断でかわしたが、太田選手はマシンを止めてしまうことに。スロットルトラブルが起きてしまったためで、あと1周と少しで自身2勝目が見えていただけに、言葉も出ないほど悔しいリタイアとなってしまった。

思わぬ形でチームメイト同士の対決が決着し、ファイナルラップをトップで迎えた牧野選手。後方からはオーバーテイクシステム(OTS)を推し続けながら山下選手が追いかけてきてはいたものの、すでについていた6秒差をひっくり返すことはできず、牧野選手がトップチェッカーを受けた。これで第2戦オートポリス大会に続いて自身2勝目を挙げた牧野選手は、シリーズランキング2位に浮上。山下選手に続き3位表彰台でレースを終えた野尻選手が着実にポイントを積み上げポイントリーダーを守っている。

Drivers’ Voice

牧野任祐 選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

【今回の成績 : 優勝】

今日は優勝という位置を手に入れることはできましたが、勝負には負けました。太田選手のレースだったと思います。残り3周のタイミングで仕掛けたものの、そこで決めきれなかったことがすべてです。太田選手は幼いころからカートレースでずっと戦い続けてきた仲間でもありライバルです。チームメイトの今は、一番身近で一番刺激をもらえる存在で、今回2台でトップ争いできたことはとてもうれしいことでした。これからも2人で争うシーンを増やしていけたらと思いますし、次は僕が勝負にも勝てるように頑張りたいです。

佐藤 蓮 選手(PONOS NAKAJIMA RACING)

【今回の成績 : 10位】

もてぎはタイヤの負荷的にはそれほどかかりにくいと思うのですが、トラクション方向が多いサーキットなので、新品タイヤと古いタイヤではタイム差が大きく出るという印象があります。抜きにくいと言われていますが、トラクションさえよければ別カテゴリーのように抜いて行けるので、タイヤをうまく使える戦略次第でチャンスが生まれるコースだと思っています。今回はスタートで出遅れてしまったのでミニマムのタイミングでタイヤを替えることになり、レースの終盤はタイヤを替えたばかりのライバルに対して苦しい戦いになってしまいました。ただ週末を通してみるとチームとしてもクルマの調子も悪くなかったので、その流れは維持して富士の2連戦に臨みたいですね。

大津弘樹 選手(TGM Grand Prix)

【今回の成績 : 15位】

もてぎはリヤタイヤへの負荷に関しては結構多いサーキットだと思っています、タイヤへの負荷には横方向と縦方向に対するものがあると思うのですが、高速コーナーが多いコースだと横方向を駆使する一方、もてぎは止まる時にも加速するときにも縦方向を駆使するサーキットなので、あまり横方向の摩耗度は少ないですね。同じスペックのタイヤで1シーズンを戦うSUPER FORMULAは、ドライビングも含めてタイヤへの攻撃性をうまくコントロールできたクルマが速いと考えています。あまり攻撃性が高くてタイヤのキャパオーバーなところで走り続ければ摩耗は速くなるし、かけすぎなければ一発の速さは出ない。その塩梅がうまく取れているところが上位にいられると思います。僕たちはそこを目指して頑張っているところで、今回のレースで得られたデータもしっかり分析して、次戦も頑張りたいと思います。

Engineer’s Voice

坂入将太 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ]

今回は何といってもレース終盤の太田選手vs牧野選手のチームメイト同士のバトルが非常に印象的なレースでした。2台体制で参戦するチームでは、2台同時にタイヤ交換することが難しいため、戦略をステイアウトとアンダーカットで分ける場面は多いかと思います。今回はその2台がワンツーを争う状況になったことから、タイヤの差による戦いが分かりやすく表れたと思います。

レース終了後のタイヤを見ても、太田選手のタイヤのダメージは大きかったので、あの状況で牧野選手を抑えていたのは本当に素晴らしい走りでした。今回は雨や気温の変化の予測も必要な天候でしたので、皆さんタイヤ交換のタイミングに悩まされるレースだったのではないでしょうか。

残す2大会はどちらも2レース制ですので流れを掴んだ選手が一気に大量ポイントを獲得できるチャンスとなります。今大会を更に上回るチャンピオン争いの盛り上がりに期待しています。

Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)

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