【SUPER FORMULA 第4戦 / 富士スピードウェイ】

レースペースで強さを見せた坪井翔選手が、4年ぶりのSUPER FORMULA優勝を飾った!!

SUPER FORMULA Round 4

開催日 2024年7月20日-21日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝周回数 41周
(1周=4,563m)
参加台数 21台
※タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク

「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」第4戦が、静岡県の富士スピードウェイで開催。7月下旬、学校は夏休みに入る時期ということもあり、イベントエリアは「SUPER FORMULA夏祭り2024」と称され、縁日屋台やヒーローショー、ミニプールなど子供向けのコンテンツが数多く並んだ。

その効果もあってか、予選日、決勝日合わせて富士スピードウェイには49,200名が来場。国内最高峰のフォーミュラカーシリーズを多くの家族連れが楽しんでいた。また、今大会は三笠宮家の瑶子女王殿下の賜杯を頂戴し、「第1回瑶子女王杯 全日本スーパーフォーミュラ選手権 第4戦富士大会」として開催される記念すべき1戦となった。

レースウィークに入る直前には梅雨明け宣言が出され、本格的な夏に突入した東海地方。富士スピードウェイも予選日の朝からじりじりと焼けるような暑さとなった。予選前に行われるフリー走行は、第2戦オートポリスでの涙の優勝から常に上位争いに顔を出している牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムをマーク。大湯都史樹選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)、坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)が上位に並んだ。

午後の公式予選は、開始の時点で気温32度。Q1B組のセッション時には気温33度、路面温度49度とこの日の最高温度を記録した。ただし、時折さわやかな風も吹き、いくらか過ごしやすい陽気の中でポールポジション争いが繰り広げられた。

Q1A組では、フリー走行トップの牧野選手をおさえて岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)がトップタイムをマーク。山本尚貴選手(PONOS NAKAJIMA RACING)が3番手につけ、ホンダ勢がトップ3を占めた。続くQ1B組は福住選手がトップタイムにつけ、大湯選手、山下健太選手(KONDO RACING)とトヨタ勢がトップ3に。それぞれのタイムを比較すると、岩佐選手と福住選手の2名だけがQ1で1分22秒台のタイムを記録しており、ポールポジションはこの2人での争いになるだろうと予想された。

かくして始まったQ2は、先にアタックに入った岩佐選手が1分22秒560をマークして暫定トップに立つが、これを福住選手が0.017秒上回り逆転。自身3年ぶり、2度目となるポールポジションを獲得した。3位には大湯選手が入ったが、福住選手との差は0.028秒。4位に入った坪井選手もトップとは0.03秒差と、上位4台は瞬き程度の差しかない接戦となった。

一夜明けた決勝日は、前夜に少し雨が降った影響か湿度が上がり、蒸し暑い一日に。朝9時20分からのフリー走行がこの日の走行開始となったが、この時点で気温はすでに31度を記録。路面温度も40度を上回るところまで上昇していた。このフリー走行でトップタイムを奪ったのは坪井選手。セッション開始早々の計測2周目でベストタイムをたたき出すと、その後の連続周回でも速いペースを記録し、決勝に向けた自信を深めていたようだ。

決勝レース前には、瑶子女王殿下のご臨席を賜ったセレモニーが行われ、賜杯もお披露目に。3万人を超える観客が注目する中、41周の決勝レースがいよいよスタートした。

予選で5番グリッドを獲得していた太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がマシントラブルからスタート前にピットに戻ってしまい、全部で20台のマシンがシグナルのブラックアウトとともに動き出す。ポールシッターの福住選手が抜群のタイミングでスタートを切った一方、フロントローの岩佐選手はストールを喫して失速。この影響を受けてコースイン側のグリッドに着いていた後方の数台には混乱が生じたが、各車はアクシデントなく1コーナーをクリアしていった。

オープニングラップを終えて、上位陣は福住選手と大湯選手がワン・ツー。それぞれ6番、7番グリッドからスタートした牧野選手と野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が坪井選手をかわして3、4番手に続いたが、3周目の最終コーナーから坪井選手がオーバーテイクシステムを使って接近。4周目に入ったホームストレートで野尻選手をとらえて4番手に浮上した。

坪井選手の勢いは止まらず、8周目の1コーナーで牧野選手をかわして3番手浮上。トップの福住選手が1分26秒前半から中盤のタイムを並べて周回するのに対し、大湯選手は0.1~0.3秒ほどラップタイムが遅れ、両者の差はじわじわと開いていく。大湯選手は逆に坪井選手に少しずつ迫られていく形になった。

レースが10周目を迎え、タイヤ交換が可能になると、上位陣で真っ先にピットに飛び込んできたのは5番手を走行していた野尻選手。翌周には牧野選手がピットに向かい、12周を終えたところで坪井選手とサイド・バイ・サイドのバトルになっていた大湯選手がタイヤ交換に入った。坪井選手は目の前が開けたことでペースアップ。14周を終えたところで福住選手がタイヤ交換に向かい、坪井選手が見た目上のトップに浮上した。

ここまで盤石の走りを見せていた福住選手だったが、左フロントタイヤを交換する前にジャッキが下がってしまい、この1輪を交換するのに大幅なタイムロスを喫してしまう。コースに復帰した時には、タイヤ交換を済ませた組の中でも6番手まで下がり、残念ながら優勝争いからは離れてしまうこととなった。

福住選手が後退したことで、トップ争いは見た目上でトップにいる坪井選手と、17周目に野尻選手をかわして、タイヤ交換を済ませた組の中で先頭に立った大湯選手の争いになった。18周目の時点では両者の差は39秒あったが、フレッシュタイヤの大湯選手はペースアップし、その差をどんどん削っていく。

ピットロードを走行する時間とタイヤ交換の作業時間を合わせて、マージンとしては少なくとも35秒程度は欲しいところ。しかし、24周目には2人の差は35秒を切り、28周目には33秒まで縮まってきた。ここで坪井選手はピットイン。ピットロードの速度制限を守ってピットに向かい、タイヤ交換を行う。その横を、レーシングスピードで大湯選手が通過。さらにその後方にいた野尻選手、牧野選手も坪井選手をかわしていった。

コース上では岩佐選手が唯一タイヤ交換に入っておらず、坪井選手は見た目上5番手、実質4番手でコースに復帰。表彰台圏内からも下がってしまった形だが、ここから坪井選手の怒涛の追い上げが始まった。交換したばかりのタイヤに熱が入ると、まずは30周目の13コーナーで牧野選手をパス。さらに31周目に入るホームストレートで野尻選手をかわし、一気に実質2番手にポジションアップする。この時点で大湯選手との差は3.8秒。坪井選手は31周目に自己ベストタイムを更新し、この3.8秒の差をどんどんと削っていく。

33周目には大湯選手の背後まで迫り、ダンロップコーナーでテールトゥノーズの状態まで近づくと、34周目の1コーナーで大湯選手に並びかけ、コカ・コーラコーナーで逆転に成功。39周を終えて岩佐選手がタイヤ交換に向かい、これで坪井選手が名実ともにトップに立つこととなった。大湯選手をかわしてからもペースは衰えることなく、じわじわと差を広げていた坪井選手は、最終的に7.1秒という大差をつけてトップチェッカー。2020年の最終戦富士大会以来となる、自身通算3勝目を飾った。

2位の大湯選手は今季初表彰台。3位には野尻選手が入り、ポイントランキングトップを死守した。ポールポジションからスタートしたものの、ピット作業でのロスで大きく後退してしまった福住選手は、それでもペースの速さを見せつけて野尻選手に0.8秒差まで迫る4位フィニッシュ。以下、牧野選手、国本雄資選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)というトップ6となった。

Driver’s Voice

坪井 翔 選手(VANTELIN TEAM TOM’S)

【今回の成績 : 優勝】

公式テストのときから決勝レースでのペースには自信があったので、この週末に対しては予選をどうしのぐかというところでした。その予選でなんとか4位には入れたので、これはチャンスがあるぞと思っていましたね。スタートでは目の前で失速した岩佐選手の影響を受けて少しポジションを落としてしまいましたが、序盤に2台を抜いて元の位置に戻せましたし、ピットに入るタイミングも抜群でした。記念すべき1回目に瑤子女王杯をいただけてうれしく思います。シーズン後半戦に向けてもいい流れが作れたなと思っていますし、この流れを崩さずに野尻選手に食らいついていけるよう、次戦以降も頑張りたいと思います。

Engineer’s Voice

坂入将太 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ]

予選がいつも以上に僅差で熾烈な戦いとなりましたが、やはり2週間前にしっかりと走り込む公式テストがあってのレースウィークということで、セットアップ、ドライバーの習熟といったものが全チーム高いレベルに揃っていたことが理由の一つであると思います。また、路気温がテストの際と同等になっていたことも、テストで得られたノウハウをそのまま活かせることに繋がったのではないかと思います。

今回、気温は30℃超、路温は50℃に迫り、昨年から供給中のサステナブルタイヤの実績の中では最も高温環境下でのレースとなりました。高温時はタイヤを労わる走りが非常に重要になってきますので、そういった走りができたドライバー、チームが最後まで良いペースを維持できたのではないかと思います。富士は元々オーバーテイクがしやすく、バトルの見所が多いコースですが、夏場はタイヤの消耗度合の差も表れやすいため、これらが相まって今回の見所の多い白熱のレースを生んだのではないでしょうか。

次戦もてぎも同様に暑くなることが予想されますので、同様の白熱したレースを楽しみにしています。

Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)

TOP