【SUPER FORMULA 第2戦 / オートポリス】

初夏のオートポリスが舞台の第2戦、牧野任祐選手が6年目で涙のSUPER FORMULA初優勝を飾った!!

SUPER FORMULA Round 2

開催日 2024年5月18日-19日
開催場所 オートポリス
(大分県)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝周回数 41周
(1周=4,674m)
参加台数 21台
※タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク

開幕から2か月という長めのインターバルを挟み、ドライバーもチームも、もちろんファンも待ち焦がれていた「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の第2戦が、大分県のオートポリスで開催された。

阿蘇山中腹に位置するオートポリスは、高低差が52mとアップダウンが大きく、様々なコーナーが連続するテクニカルなレイアウトで国内屈指のチャレンジングなコースだ。感染症禍で大きくスケジュールが変更となった2020年を例外として、近年のSUPER FORMULAは5月の初夏に開催されることが多い。天候に恵まれれば初夏の日差しで暑さも感じるようなコンディションでの戦いになるが、今年はその初夏を超えて一気に夏まで季節が進んだかのような陽気に恵まれ、公式予選日は気温が30度に届こうかというところまで上昇した。

今大会のエントリーは開幕戦と同じ21台。ただし、ITOCHU ENEX TEAM IMPULはドライバー変更があり、テオ・プルシェール選手に替わってシーズンオフに行われたルーキーテストに参加していたベン・バーニコート選手がスポットエントリーした。そして、このバーニコート選手を含め、4名のルーキードライバーはSUPER FORMULAでオートポリスを走るのは初めて。開幕戦と大きく異なるコンディション、特徴が全く違うコースでどのような走りを見せるのか注目された。

5月18日(土)の公式予選は、お馴染みの2段階ノックアウト方式。Q1のグループAでは開幕戦でフロントローグリッドを獲得した太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムを奪取すると、B組ではチームメイトの牧野任祐選手が同じくトップタイムでQ1を突破した。

シーズン初戦に続いてDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが速さを見せたが、Q2で最速タイムをたたき出したのはルーキーの岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)。Q1では0.1秒太田選手に後れを取ったが、Q2に向けて完璧にアジャストすると、2位の牧野選手に対して0.3秒の差をつけた。

牧野選手と3位の山本尚貴選手(PONOS NAKAJIMA RACING)が0.076秒差、山本選手と4位の阪口晴南選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)との差はわずか0.001秒だったことを考えると、岩佐選手のタイムが如何に飛び抜けているかが分かるだろう。山本選手から、4位阪口選手、5位野尻智紀選手(TEAM MUGEN)、6位坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、7位太田選手までの差は0.048秒と、史上まれにみる僅差の戦いとなった。

一夜明けた5月19日(日)の決勝日も、前日と変わらず好天に恵まれたオートポリス。ただ、朝のうちは風が強く、決勝レースを前に午前中に行われるフリープラクティスでは突風の影響でバランスを崩してしまい、木村偉織選手(San-Ei Gen with B-MAX)、三宅淳嗣選手(ThreeBond Racing)がコースアウト。2台はそれぞれマシンにダメージを負ってしまったが、チームの懸命な作業で決勝までには修復が完了し、スターティンググリッドには21台全車両が揃うこととなった。

その強い風も決勝レースが近づくにつれて徐々に収まり、気温24度、路面温度38度というコンディションで41周の決勝レースがスタートした。ホールショットを奪ったのは2番手スタートの牧野選手。岩佐選手はホイールスピンが響いてわずかに出遅れ、3番手スタートの山本選手の先行も許してしまった。スタートでトップに立った牧野選手は山本選手との差も徐々に広げて快走。2番手以降はいくつかの接近戦はあるものの、順位としては膠着したまま周回数が進んでいく。

動きが出てきたのはタイヤ交換が可能となる10周を過ぎたところから。いち早くピットに入ってきたのは山本選手と太田選手、11番手を走行していた福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)ら5台。タイヤ交換を済ませた、いわゆる「裏1位」は山本選手がキープし、アンダーカットを狙って30秒以上ある牧野選手とのギャップを削るためプッシュしていった。見た目上トップの牧野選手と、山本選手が前方からいなくなったことでペースアップした岩佐選手は、ともに1分32秒台中盤のタイムで周回。一方の山本選手は前方に車両のいないクリアスペースの中で、フレッシュタイヤで時折1分31秒台にタイムを乗せ、じわじわと差を詰めていった。

しかし、ペース良く走行しているうちに前方を走る集団に追いついてきてしまい、17周目あたりからは彼らに引っかかってしまう形でややペースダウン。実にわずかずつではあるが、縮めていた差が再び30秒を超えるところまで広がってしまう。

24周を終えたところで、牧野選手と岩佐選手が同時ピットイン。この1周前の時点で牧野選手と山本選手の差は30.4秒まで広がっていた。2チームともミスのない作業でドライバーをコースへと送り出す。すでに山本選手と太田選手はホームストレートに入ってきており、牧野選手は山本選手の目の前でコース復帰に成功。一方の岩佐選手は太田選手の先行も許し、裏のグループで4番手にドロップしてしまった。ただしタイヤを替えたばかりの岩佐選手は、タイヤに熱が入ると一気にペースアップ。このあと太田選手、山本選手も攻略してポジションを取り戻していくのだった。

事実上のトップを守った牧野選手に対し、山本選手も勝負は相手のタイヤに熱が入るまでと猛プッシュする。牧野選手のアウトラップ、2コーナーから3コーナーでは一気に背後まで近づくが、すでに15周近くを走行したタイヤでは決定打を作れず、むしろ後ろから襲い掛かってくる太田選手にも警戒しなければならない状況。牧野選手は加速のためにオーバーテイクシステムも使いながらフルプッシュ。アウトラップで3秒近いマージンを作ることに成功した。山本選手は太田選手の猛攻に防戦一方の状態ではあったが、巧みにラインをブロックして逆転は許さず、2番手を死守していた。

山本選手と太田選手のバトルを背後で冷静に見守っていた岩佐選手が、このあと勝負に出る。27周目の1コーナーで太田選手のイン側に飛び込むと、今度は2コーナーへアウト側からアプローチ、そのまま3コーナーで一気にオーバーテイク。さらに山本選手にも一気に追いつき、28周目にはテールトゥノーズまで近づいていった。

第2ヘアピンコーナーを超えて一気に駆け下りた後、複合コーナーをのぼりながら抜けていく後半セクションで、タイヤが消耗している山本選手に対し岩佐選手が急接近。ここは山本選手がベテランの意地を見せて岩佐選手をおさえきったが、その後も岩佐選手からのプレッシャーは続き、32周目の1コーナーでもラインが交錯する場面も。そして34周目、直前の最終コーナーで真後ろに張り付いた岩佐選手がホームストレートで並びかけ、ついに逆転。前が開けた岩佐選手は、はるか13秒先の牧野選手を追いかけることになる。

岩佐選手に先行された山本選手は、その後100Rコーナーで坪井選手にもかわされ4位に後退。坪井選手は全体でも3番目に遅い25周終了時のピットインでタイヤの状況が良く、ピットアウト後に阪口選手を好バトルの末に抜き去ると、山本選手と岩佐選手の激しいバトルの後ろで太田選手もとらえて4位に上がっていて、山本選手をかわしたことで表彰台の一角まで浮上した。

残り周回数が少なくなっていく中、岩佐選手は懸命に牧野選手との差を削っていくが、ピットインのタイミングが同じだったこともありタイヤの状況も大きな差はなく、背後にまでは近づけない。終盤まで牧野選手の独走態勢は崩れることなくトップチェッカー。2019年にSUPER FORMULAにデビューした牧野選手だが、参戦6年目にしてようやく手にした優勝に、涙あふれるウイニングランとなった。2位の岩佐選手はポールポジションスタートだっただけに悔しい結果だが、参戦2戦目にして初表彰台を獲得。3位の坪井選手も今季初表彰台獲得となった。

Driver’s Voice

牧野任祐 選手 (DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

【今回の成績 : 優勝】

初優勝までが長く、チームメイトがどんどん勝って行く中でずっと苦しい思いをしてきました。落ち込むことも多かったですが、やっと優勝できて本当にうれしいですし、安堵の気持ちも大きいです。チームのピット作業が素晴らしくて、山本選手の前でピットアウトできたことが勝因の大きな一つだと思います。決勝に向けたクルマの調子は良かったですし、タイヤ交換をしてからのスティントではさらに調子が上がったので、タイヤのマネージメントも考えながら落ち着いてレースができました。

Engineer’s Voice

坂入将太 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ]

オートポリスでの一戦は昨年同様、非常に暑い中でのレースとなり、コース特性と相まってタイヤデグラデーション(パフォーマンスの低下)の差が顕著に現れた手に汗握るレース展開でした。そんな中でトップの牧野選手は終始デグラデーションを感じさせない圧倒的な安定感を持った走りで、タイヤ交換も理想的なタイミング、ピット作業もミスなく完璧に行われ、ドライバーとチームが一丸となって獲得した初優勝にとても感動しました。

開幕戦は非常に寒い中でウォームアップに苦戦するレース、第2戦はデグラデーションに苦戦するレースと、タイヤに関しては両極端な環境でのレースだったと思います。ここまでは経験豊富なベテランドライバーが有利に見られましたが、この2回の戦いを経て、今回ポールポジションを獲得した岩佐選手を始め、ルーキー勢が着実にベテラン勢との差を詰めていると思いますので、今後のルーキードライバーの追い上げに注目しています。

今回は開幕戦と表彰台の顔ぶれがガラッと変わり、ポイントランキングでは誰がチャンピオンとなるのか、まだまだ予想ができません。次戦のスポーツランドSUGOは雨も懸念される時期ですので、万が一久しぶりのウェットレースとなれば、また表彰台の顔ぶれも変化するのではないかと思います。

Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)

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