【NLS(Nürburgring Langstrecken-Serie) 第6戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

レース中盤まで激しいトップ争いを演じたScherer Sport PHX はアクシデントで惜しくもリタイア、Team ADVAN×HRTは堅実なマシンリレーで4位完走を果たした!!

NLS Round 6

開催日 2024年11月16日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 公式予選 : 曇り
決勝 : 曇り
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝時間 4時間
(1周=24,358m)

4月に開幕した2024年のNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)も、いよいよシーズン最終戦を迎えた。11月16日(土)に行われた第6戦は前戦と同じ4時間の決勝レースで競われ、ヨコハマタイヤを装着して最高峰のSP9Proクラスに2台のマシンが挑んだ。

開幕戦からヨコハマタイヤとともに戦うTeam ADVAN×HRT、ゼッケン6をつけて参戦するメルセデス-AMG GT3はデニス・フェッツアー選手/フィン・ウィベルハウス選手/サルマン・オウェガ選手のトリオがドライブ。今年初めて6号車のステアリングを握るウィベルハウス選手は2006年生まれのドイツ人で、18歳の若手ながら去る9月にレッドブルリンクで開催されたADAC GT MASTERSでは優勝も飾っている成長株だ。

一方、前戦からヨコハマタイヤを装着するScherer Sport PHXのアウディ・R8 GT3 EVO2は、フランク・スティップラー選手とマルクス・ヴィンケルホック選手がコンビを組む。前戦での準優勝獲得に大きく貢献したスティップラー選手、今回パートナーとなるヴィンケルホック選手はニュルブルクリンク24時間レースで3回の総合優勝も経験している実力派、こちらはベテランコンビで優勝を目指す。

午前中に行われた公式予選、どんよりとした灰色の雲が空を覆う中で90分間のセッションがコースオープン。スティップラー選手がドライブするScherer Sport PHXのアウディは計測1周目に7分55秒台をマークすると、アタック2周目でさらにタイムアップ。7分53秒034をマークして、タイミングモニターの最上段に名前を刻んでピットイン。

Team ADVAN×HRTのメルセデス-AMGはフェッツアー選手から3人がマシンをリレーして周回、最後にオウェガ選手が7分56秒232を刻んでベストタイムとなり、決勝4番手のスターティンググリッドを獲得した。また、長く総合トップに立っていたScherer Sport PHX は、セッション終了間際に7分51秒台を48号車(メルセデス-AMG)がマークして2番手という結果に。惜しくもポールポジションは譲ったものの、フロントローから決勝スタートを迎える運びとなった。

予選終了から決勝スタートまでのインターバルは2時間というタイムスケジュール、ただし決勝へのコースインまでは1時間10分しかなく、それまでの間にはピットウォークも催されるのでチームは慌ただしく準備を進めながら時間を過ごす。大勢の観客で賑わいを見せたピットウォーク、空模様は変わらず曇天で人々は一様に厚い上着を着込んでいた。

ピットウォークが終わると各車がコースイン、天気予報では雨の可能性こそ低いものの気温/路面温度ともに5℃と冷え込んでいる。コースが25kmほどと長いニュルブルクリンク、場所によっては風の影響などもあってさらに温度が低い場所も存在する可能性が高い。

1周のフォーメーションラップから、いよいよ今シーズンを締めくくる最終戦がスタート。スティップラー選手が駆る2番手スタートのScherer Sport PHX は2コーナーまでで4番手にポジションを下げるも、すぐにひとつ回復して3番手でアイフェルの森へとマシンを進めて行った。そして2周目には2番手に復帰、1.584秒差で48号車を追いかける。

48号車の真後ろにつけるスティップラー選手、3周目を終えてその差は0.338秒へとさらに縮まった。一方で後ろには17号車(アストンマーティン)がつけており、三つ巴のトップ争いは激しさを増していく。

5周目、スティップラー選手はスリップストリームも巧みに使って48号車の右側へ出てサイド・バイ・サイドに持ち込んだ。さらに17号車は左へ出て、スリーワイド状態で互いに牽制し合う格好に。48号車を両サイドから抜き去るかたちになったが、17号車が先行して惜しくもスティップラー選手は48号車をパスするもポジションは2番手で変わらず。しかし終盤で再びスティップラー選手はトップ奪還に向けて仕掛け、17号車をかわして先頭でホームストレートへ戻ってきた。

この激しいトップ争いを終え、48号車はSP9勢で最初に1回目のピットインを敢行。その他の上位陣はScherer Sport PHXとTeam ADVAN×HRT を含む5台が7周を終えてピットへ入り、このタイミングでレースは1時間を経過した。

Scherer Sport PHXはヴィンケルホック選手がセカンドスティントを担当、先にピットインした48号車がトップを走り、17号車に続く3番手につける。10周目のラップタイムは48号車が8分29秒461、17号車は8分27秒231であるのに対して、ヴィンケルホック選手は8分24秒275と勢いを見せた。この勢いは留まることなく、12周目の終盤でヴィンケルホック選手が17号車をかわして2番手を奪取。この後は背後から仕掛けてくる17号車をしっかりおさえてポジションをキープ。13周を終えて48号車が2回目のピットイン、ヴィンケルホック選手が暫定トップに立って間もなくスタートから2時間を迎えてレースは後半戦に入った。

しかし後半に入ってすぐ、ピットのモニターにはまさかの光景が映し出された。Scherer Sport PHXのアウディがアクシデントから、ハッツェンバッハでコースサイドにマシンをストップしていたのである。予選から決勝を通じて常にトップ争いの一角を占める速さを見せていただけに、残念な結果となってしまった。

一方のTeam ADVAN×HRTは、安定したラップを重ねてオウェガ選手、ウィベルハウス選手とマシンをリレー。最終スティントはフェッツアー選手が担当、4時間の決勝を走り抜いて表彰台にあと一歩と迫る4位でチェッカーを受けてシーズンを締めくくった。

Engineer’s Voice

三好雅章 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ]

例年は10月が最終戦のところ今年は11月の最終戦となり、低温となると予想はしていました。しかし、通常のニュルブルクリンクにおけるタイヤ開発の中では、ここまでの低温は想定外の温度域となります。Scherer Sport PHXのトラブルによるリタイアは残念ですが、我々の強みも確認でき、想定外の温度ではありますがレーススタート時の課題も確認できました。

今シーズンは昨年と参戦車両が異なり、メルセデス-AMGとアウディ・R8になりました。これまでと異なったタイヤ開発が必要になりましたが、両チームともに上位を争えるパフォーマンスを発揮しており、異なる車両や様々なコンディションにおいても、安定した性能を提供できるようになってきたと考えています。もちろん、まだまだ改良進化が必要とも考えています。前戦からパートナーとなったScherer Sport PHXは24時間レースで優勝もしているチームであり、ドライバー・エンジニア・メカニックのすべてが優勝を目指して同じ方向を向いていると感じています。その中で、課題を共有することでタイヤ開発を行っています。結果が求められる非常に厳しい環境ですが、我々も同じ方向を向いて開発を行えていると考えています。

このオフシーズンで課題をしっかり整理し、来年のNLS、そして24時間レースに向けてニュルブルクリンクで活躍するYOKOHAMA/ADVANを見せられるように、しっかり取り組んでいきます。

Text : 斉藤武浩(Takehiro Saito / office North-Star)

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