【NLS(Nürburgring Langstrecken-Serie) 第4戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

スタート直後の豪雨による多重クラッシュ発生で赤旗中断から時間短縮での開催となった第4戦、波乱の展開を制して最高峰のSP9クラスに参戦するTeam ADVAN×HRTが総合初優勝を飾った!!

NLS Round 4

開催日 2024年8月3日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 晴れ~雨~晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ~ウェット~ドライ
決勝時間 6時間
(1周=24,358m)
※赤旗中断により、4時間で実施。

2024年シーズンの戦いは後半に突入したNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)、第4戦は8月3日(土)に6時間の決勝レースというカレンダーだ。他のシリーズ戦が4時間であるのに対して2時間長い一戦、シリーズ争いにとっても重要さが増すことになる。

2台のメルセデス-AMG GT3で参戦するTeam ADVAN×HRTは、6号車と9号車がともに最高峰のSP9 Proクラスへ参戦。6号車はアルジュン・マイニ選手/デニス・フェッツアー選手/ユスフ・オウェガ選手、9号車はサルマン・オウェガ選手/デビッドシューマッハ選手/フーバート・ハウプト選手というドライバーラインアップで臨む。

現地時間8時のコンディションは上空の4割ほどが雲に覆われており気温は17℃。当初予定から30分遅い9時にスタートした公式予選はセッション時間も60分と通常より30分短い設定とされた。この予選がはじまると、Team ADVAN×HRTの2台は揃って好調な走りを披露していく。早々にまずは6号車が8分12秒791を刻んで、タイミングボードの最上段にその名を連ねた。ここから各車がタイムアップ合戦を繰り広げていく中、6号車は7分56秒743をマークしてトップの座を譲らず。これに0.862秒差と肉薄したのはチームメイトの9号車、Team ADVAN×HRTがワン・ツー体制を構築した。

しかし、同じメルセデス-AMG GT3の48号車にかわされ、両者は2番手と3番手にドロップ。惜しくもポールポジションには届かなかったものの、メルセデスAMG GT3による予選トップ3独占の立役者となった。ただ、残念なことに予選2番手のリザルトを残した6号車は、アクシデントにより決勝への出走を断念する結果となってしまった。

11時40分を過ぎて、6時間の決勝はフォーメーションラップが開始された。残念ながら6号車の姿は2番グリッドに無かったものの、ポールポジション車両の真後ろには9号車がつけて虎視眈々とスタートの瞬間を待つ。そして正午になってレースはスタート、この時点で気温は22℃ほどへ上昇、気になるのは雲が増えて上空をほぼ隙間無く覆っていたことだ。

もっとも、雲の多さが気になったのは結果論でもあり、果してスタートの前後にどれほどの人がこの先の展開を予想出来ただろうか。オンタイムの正午にスタートが切られた6時間の決勝レース、9号車を駆るハウプト選手はポジションをキープして1コーナーをクリアした。

このあと、ハウプト選手は後続の先行を許しポジションをドロップ。しかし一見するとペースが伸び悩んでいるようにも見える展開であるが、実際はこの先を読んだ戦略によるペースコントロールであった。

ハウプト選手のオープニングラップは8分42秒798というタイム、ポジションは8番手。このオープニングラップではフォーメーションラップ開始時点のドライコンディションが嘘のように、雨が降り始めていた。ハウプト選手はこの雨が勢いを増すことを見越し、あえて先頭集団から一歩引いたポジションをキープ。そして2周目に入るとほぼ時を同じくして雨足が一気に勢いを増し、あっと言う間にコースはウェットコンディションへと転じたのだ。

各車が装着しているのはドライ用のスリックタイヤ、ノルドシュライフェは阿鼻叫喚の様相へと変わってしまった。スリックタイヤを装着していたのはハウプト選手も例外では無かったが、至近距離にライバル勢がいなかったこともあってしっかりペースを落とした。一方、各所でコースオフやスピンが続発、中でもハッツェンバッハで発生した多重クラッシュでは7台のSP9クラス車両が関係して、その全てがレースの続行を断念せざるを得ない展開に。また、1台は別の場所でマシントラブルから、やはり戦線離脱を余儀なくされた。

この急なコンディションの悪化とクラッシュの発生によって12時10分には赤旗が提示され、レースは中断されてしまった。そんな中、9号車はアクシデントに巻き込まれることなく、ハウプト選手は慎重なドライビングでマシンをピットへと戻していた。

12時49分、中断されていたレースは14時に4時間へ短縮して再開される旨がアナウンスされた。9号車は再びハウプト選手がステアリングを握り、仕切り直しとなるスターティンググリッドへマシンをつける。さきほどの豪雨が嘘のようにコンディションが回復したニュルブルクリンク、9号車がポールポジションから再スタートを迎え、4時間となった決勝を走りきった9号車は総合優勝を飾り、総合順位で2番手に3分30秒ほどの大差をつけるリザルトを残すことに成功。Team ADVAN×HRTとしてはNLS初の総合優勝をおさめ、ステアリングをハウプト選手から受け継いだシューマッハ選手とオウェガ選手という二人の若手にとっても記憶と記録に残る表彰台獲得となった。

Text : 斉藤武浩(Takehiro Saito / office North-Star)

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