【NLS(Nürburgring Langstrecken-Serie) 第2戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

公式予選から速さを見せて総合2番手のスターティンググリッドを獲得したTeam ADVAN×HRT 、SP9 Pro-Amクラスで連勝を飾って“開幕ダブルヘッダー”から強さを見せた!!

NLS Round 2

開催日 2024年4月7日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 公式予選 : 曇り
決勝 : 曇り
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝時間 4時間
(1周=24,358m)

“ダブルヘッダー”で2024年の開幕を迎えたNLS(Nürburgring Langstrecken-Serie)は、前日の第1戦に続いて4月7日(日)に第2戦が4時間の決勝レースで競われた。

Haupt Racing Teamとヨコハマタイヤのパートナーシップで2024年のニュルブルクリンクに挑む「Team ADVAN×HRT」、ゼッケン6をつけたメルセデス-AMG GT3を駆るのは、昨日の第1戦と同じ3人のドライバー。まずは、それぞれの略歴を紹介していこう。

チームオーナーでもあるフーバート・ハウプト選手は1969年生まれの54歳、1983年にレーシングカートをはじめ、1990年にドイツ・ツーリングカー・チャレンジで4輪レースへの参戦を開始。その後はDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)やインディ・ライツなどへの参戦を重ね、FIA GT選手権やVLN(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)、ブランパンGTシリーズなどで勝利を飾ってきた。一方では実業家としての成功をおさめている、多才なジェントルマンドライバーである。

ドライバーラインアップでもっとも若手となる22歳のデニス・フェッツァー選手は、工科大学で機械工学を学んだ理系ドライバーで、2012年にレンタルカートで初めてモータースポーツに触れたところからキャリアをスタートした。毎年順調なステップアップを果たし、国際カテゴリーに挑戦するに至る。そして2019年にポルシェ911 GT3カップで4輪レースへの本格参戦を開始、2021年にはヨコハマタイヤを装着するBMW・M6 GT3でVLN(当時のNLSのシリーズ呼称)へ初参戦を実現、現在に至っている。

そして26歳のラルフ・アーロン選手も他の二人と同様に、レーシングキャリアはカートからスタートさせた。母国エストニアの国内選手権で2010年のデビューイヤーのタイトルを獲得、2014年にフォーミュラ・ルノーで4輪レースにデビュー。着実なステップアップを重ね、2017年にはヨコハマタイヤのワンメイクで競われていたマカオグランプリのFIA F3 World Cupで3位表彰台を獲得するなどの活躍を見せた。近年は、ツーリングカーへ主戦場を移している。

8時30分、ドイツのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェへと進んでいくレーシングマシンたち。前日の第1戦でチェッカーフラッグが振られてから16時間30分、この週末はダブルヘッダーが組まれている2024年のNLSは第2戦の公式予選がスタートした。開始から30分が経った9時の段階で気温は13℃、上空は雲に覆われているものの予報では雨の心配は無さそうだ。

この予選で遺憾なく速さを見せたのはハウプト選手、開始から1時間が経過しようとするタイミングで8分02秒896をマークして暫定ながら総合トップに躍り出る。その後、しばらくピットでステイした後、終盤で再び渾身のアタックを行い7分57秒216までタイムを伸ばし、SP9 Pro-Amクラスのトップを獲得。総合でもProクラスに参戦するマシンから僅か0.995秒差の、2番手となる決勝スターティンググリッドを手中におさめた。

昨日と同じく正午にスタートを切った4時間の決勝、まずステアリングを握ったのはアーロン選手。1周のフォーメーションラップを経てローリング方式でのスタートでは、1コーナーに対してアウト側のグリッドからアプローチしたこともあり、若干ふくらんだ隙に後続の2台が先行して4番手のポジションとなる。その後、さらに後続の3号車(ポルシェ・911 GT3R)がノーズを入れてきたが、次の2コーナーでしっかりブロックしてポジションをキープした。

ところによりダスティなコンディションも見られるノルドシュライフェだったが、執拗にプッシュしてくる3号車に対してアーロン選手は付け入る隙を与えない。2周目の終盤ではスリップストリームから車体半身ほど3号車が前に出たが、アーロン選手は落ち着いたドライビングでこれを制して4番手を死守。6台の先頭集団が形成されていく中、接近戦はさらに熱を帯びていく。

4周目には再び4号車がアーロン選手に仕掛け、コーナーでインをさしてきた。しかし今度も先行を許すことは無く、逆に4号車はラインがふくらんだことから後続の27号車(ランボルギーニ・ウラカン GT3 Evo II)と順位を入れ替える結果になった。

そして5周を終えて、激しい鍔迫り合いを繰り広げてきたアーロン選手と4号車が、ともに早いタイミングでのピットインを敢行。アーロン選手は自らのスティントを7分58秒760で締めくくり、ハウプト選手にマシンをリレーした。

7周を終えてトップ4台が一斉にピットイン、その翌周に入ったタイミングでレースはスタートから1時間を経過。この8周目にGT3勢で最も1回目のピットインを遅らせていた7号車(ランボルギーニ・ウラカン GT3 EVO I)が入り、これでハウプト選手は2番手のポジションとなる。トップとの差は12~13秒、一方で3番手は真後ろにつけているという状態。ハウプト選手はベテランらしいマシン捌きでノルドシュライフェを攻略、総合の表彰台圏内でトップ奪取に向けて期待が高まるところだった。

しかし12周目、スタートから1時間40分の時点でハウプト選手はスロー走行を強いられる展開に。マシンはピットへ戻り、13分ほどの停車でトラブルシューティングを行い、ドライバーをフェッツァー選手に交代して戦線へと復帰した。

想定外のピットストップで総合トップからはラップダウンを強いられたものの、決勝は折り返したばかりで2時間ほどを残している。フェッツァー選手はポジションを挽回するべく力走を重ね、16周を終えて総合24番手だったものが翌周には21番手へ上がり、さらに18周目には同じSP9 Pro-Amクラスへ参戦する7号車のピットインによりクラストップを奪還した。

その後は22周を終えて最後のピットイン、ドライバーはフェッツァー選手が継続して最終スティントへ臨む。フェッツァー選手も安定したラップを刻み、マシンやタイヤのトラブルに見舞われるライバルも散見された中でしっかりマシンをフィニッシュまで運んでチェッカーを受けることに成功。

SP9 Pro-Amクラスで開幕二連勝を飾り、随所でProクラス勢に引けをとらない速さを見せた「Team ADVAN×HRT」。次の週末に控えたニュルブルクリンク24時間の予選レース(Qualifiers)に向けて大きな手応えを掴んだ開幕戦ダブルヘッダーとなった。

Engineer’s Voice

三好雅章 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ]

今年は新たにHaupt Racing Teamとのタッグでニュルブルクリンクにチャレンジしていきます。NLSの開幕にあたっては24時間レースで優勝するためにチームと車両が変わったことで、何が必要なのかという課題を抽出することをメインに考えていました。Haupt Racing Teamはニュルブルクリンクの近くに素晴らしいファクトリーがあり、レースへの強い意気込みを感じました。とてもフレンドリーでありつつ、しっかりと必要な事を行っている地に足のついたとてもレベルの高いチームです。

車両は昨年までのBMWからメルセデス-AMG GT3に変わりましたが、フロントエンジンの後輪駆動であることは同じです。しかし車両が違うことでタイヤへの入力が異なっており、特にエンジンが大きいのでフロントタイヤへの負荷が大きいかと感じています。メルセデス-AMG GT3は日本のSUPER GTでも多くのユーザーさんがいらっしゃいますが、SUPER GTはニュルブルクリンクと比べればスプリント色が濃いカテゴリーです。ですが、もちろんSUPER GTの知見も活かしてニュルブルクリンク用のタイヤ開発を進めています。

今年は新たなチャレンジとなりますが、大きな目標である24時間レースに向けて必要なことは何かという点をチームと話し合いながら開発を進めています。耐久レースでは全体の総合力が問われますから、チームとの関係をより強固にしてタイヤ側からの支援をしっかり行い、ヨコハマタイヤの優れたパフォーマンスを見せられるように取り組んで行きます。

Text : 斉藤武浩(Takehiro Saito / office North-Star)

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