【ニュルブルクリンク24時間レース (Qualifying 1&2) / ドイツ・ニュルブルクリンク】

52回目のニュルブルクリンク24時間レースが開幕、初日から“ニュルウェザー”が容赦なく襲うタフな展開に!!

24h Nürburgring Qualifying 1&2

開催日 2024年5月30日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 Qualifying 1 : 曇り のち 雨
Qualifying 2 : 曇り
路面 Qualifying 1 : ドライ~ウェット
Qualifying 2 : ドライ

待ちに待ったニュルブルクリンク24時間耐久レースのレースウィークが、いよいよ始まった。レースウィークを前に数多くのファンたちがキャンピングカーや自家用車でニュルブルクリンクへ集い、到着するとDIYが得意なドイツ人らしく次々とコースサイドにテントを張り、中にはお手製の観戦スタンドまで組み上げる者もいるなど、お祭り騒ぎの24時間レースを思い思いのスタイルで楽しみはじめている。

NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)及び、今季のニュルブルクリンク24時間耐久レースで、横浜ゴムが「Team ADVAN×HRT」としてパートナーシップを組むのは、ニュルブルクリンク近郊のモイスパートに最新の設備が整い、ヘリポートを備える巨大ファクトリーを構えるHRT(ハウプト・レーシング・チーム)。

ニュルブルクリンクで花形ともいえる、FIA GT3車両によるSP9クラスのプロ・アマクラスに参戦。チームオーナーでもあるフーバート・ハウプト選手/デニス・フェッツァー選手/ラルフ・アーロン選手/サルマン・オウェガ選手の4人がメルセデス-AMG GT3を駆り、強豪揃いの25チームがひしめくSP9で24時間のバトンをつないでいく。

また、2024年はメルセデス・ベンツにとってモータースポーツ活動130周年という節目であり、SP9クラスに参戦する5台のメルセデス-AMG GT3とSP10 クラスのメルセデス-AMG GT4の合計6台が総合優勝を狙う一角を「Team ADVAN×HRT」も占めることとなる。

グランプリコースとノルドシュライフェを繋いだ全長 25,378mという世界有数の難関コースでは、ドライバーの高い集中力とスキルだけではなく、チーム力、タイヤをはじめとするマシンに関わる全てのパーツの信頼性とポテンシャルが要求される。そして、何かひとつが欠けると勝利は遠のくという厳しい世界がニュルブルクリンク。そんなノルドシュライフェはレースで利用されるだけではなく、自動車メーカー、タイヤメーカー、サプライヤーが開発テストとしてよりよい製品作りの為に日々鍛錬する場でもあるのだ。それだけにそれらのメーカーにとっても、24時間耐久レースはその品質の証明の場でもある。

通常のレースにある予選前に開催されるフリープラクティスは行われず、最初の走行が予選1回目となる事がニュルブルクリンク24時間の特徴でもある。このため、チームやドライバーは事前に相当の準備を重ねてこのレースへ臨むのだが、それでも天気だけは誰にも平等であり、コントロールが出来ない。アイフェル地方の森の中にあるノルドシュライフェだけに天気予報は役に立たないといわれる程に天候がコロコロと変化する事も多く、“ニュルウェザー”とも呼ばれている。このことを踏まえ、ヨコハマタイヤは豊富なレインタイヤの準備も整えて、あらゆる天候とコンディションに対応出来る体制で戦いに臨む。

セッションが始まる5月30日(木)の朝はあいにくの冷たい雨が降りしきる中、気温は10℃とニュルブルクリンクを象徴するようなコンディションでの幕開けとなった。予選1回目が開始される13時には、曇っているものの雨はすっかり上がっていた。しかしグランプリコースはドライコンディションでのスタートとなったものの、ノルドシュライフェでは所々でウェットコンディションが残り、芝生はぬかるみ非常に滑り易いコーナーがあちらこちらに出現していた。このため予選1回目ではコースアウトやスピンをするマシンが続出し、イエローフラッグやコード60(60㎞/h速度制限)が続出する。

4月12~14日に開催された予選レースにおいて予選を通過しているマシンは、13時から開催される予選1回目で最初の20分間は走行が禁止されている為に、Team ADVANⅹHRTのメルセデス-AMG GT3はピットに留まっていた。その禁止時間が過ぎるとフェッツァー選手がステアリングを担い、スリックタイヤでコースイン。だが、ドライコンディションは束の間で、14時20分頃からノルドシュライフェで雨が降り始め、瞬く間に強い雨へと変わった。フェッツァー選手からバトンを受け継いだハウプト選手は、スリックで走行中の突然の雨に慌てることなく、ベテランらしい判断でウェットコンディションでのタイムアタックを避け、無傷でマシンをピットへ戻した。予選1回目が終わるころには雨足が一層強まった事もあり、気温は11℃まで下がった。

夕方になると雨雲が遠ざかり、ほんの一瞬ながらも美しい夕焼けが厚い雲の合間から輝いた。そしてナイトセッションの始まりは気温が上がらず11℃と、身震いするような寒さの中で始まった。20時からの予選2回目では1回目と同様に、既に予選レースを通過しているチームは20分間の出走停止時間が設けられており、Team ADVAN×HRTのメルセデス-AMG GT3もピットへ留まったが、その分しっかりと出走準備を整えられるだけに、予選を通過していることによる20分間は利点ともいえるだろう。

初夏のドイツの日没は遅く、21時を過ぎてもまだ辺りは明るくドライコンディションでスリックタイヤの感触を確かめるには貴重なサンセットタイムだ。Team ADVANⅹHRTとドライバー4名にとってはヨコハマタイヤを装着してのニュルブルクリンク24時間レースへの参戦は初めての事とあり、一周ごとが決勝レースへ向けての大切なプロセスとなる。その理由としては、ノルドシュライフェはコーナーによってグリップの度合いやデグラデーションがかなり異なるだけに、ヨコハマタイヤとHRT、メルセデス-AMGのサポートエンジニア達にとっても貴重なデータ収集の機会となる。

日没直前の辺りが薄暗くなり始めた頃、Team ADVANⅹHRTのメルセデス-AMG GT3がノルドシュライフェの9周目にブライトシャイト/フックスローエを走行中に単独クラッシュを喫してしまった。マシンはピットへ戻され、金曜日の13時30分からスタートする予選3回目へ挑むために、チームは総力を挙げてリペア作業に取りかかった。

Driver’s Voice

フーバート・ハウプト選手 [Team ADVAN×HRT]

既に予選を通過していますので、24時間レースの予選ではリスクを冒す事を避けたいと思っています。予選1回目では最初こそドライコンディションでしたが、瞬く間に強い雨に変わりタイムアタックが出来る状況ではありませんでした。もしも決勝レースで同じような雨量があった場合には、第一にドライバーの安全を考えてコード60に制限するか、レースの休止をする必要があるのではないかと考えています。それ程にコース上にはかなり多くの水が流れ込み、非常に危険な状況だと実際に走行して実感しています。

タイヤの選択、タイヤの交換のタイミング、迅速かつフレキシブルな対応が必要となる事から、チームのしっかりしたコミュニケーションも重要で、このような天候下のレースでは、運も味方に付ける必要があるでしょう。予選2回目のクラッシュは残念でしたが、このような事もレースにはつきものです。明日の予選3回目にはマシンをしっかり修復して、完璧な状態で挑みたいと思います。

今大会の目標は、SP9 プロ・アマクラス優勝はもちろんの事、総合でもなるべく上位入賞を目指したいと思います。

Text : 池ノ内みどり(Midori IKENOUCHI)

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