【SUPER GT 第7戦 / オートポリス】

悪天候で1デイ開催となったオートポリス、GT500の名取鉄平選手がクラス初ポールポジションを獲得、決勝はVENTENY Lamborghini GT3が今季2勝目をマークした!!

SUPER GT Round 7

開催日 2024年10月19日-10月20日
開催場所 オートポリス
(大分県)
天候 決勝 : 曇り、公式予選 : 曇り
路面 決勝 : ドライ、公式予選 : ウェット
決勝時間 3時間
(1周=4,674m)
参加台数 42台
(ヨコハマタイヤ装着車 17台)

オートポリスで初めての3時間レースとなる2024年のSUPER GT第7戦は、悪天候に翻弄される大会となった。10月19日(土)は朝から真っ白な霧に包まれ、公式練習はキャンセルに。午後は視界が煙るほどの豪雨にも見舞われ、サポートレースはキャンセルとなった。

公式予選の時刻が近づくにつれて雨脚は弱まってきたものの、コース上にはいたるところに川ができ、コースサイドの泥も流れ込んできている状態。ここから予選時刻までにコース状況の回復が見込めないことから、予選セッションもキャンセルされ、翌20日(日)の8時から、GT500クラス、GT300クラスそれぞれ30分ずつの計時予選へと変更された。

一夜明けた20日も朝から霧が立ち込めていたが、なんとか視界は確保できるという状況で8時から公式予選がスタートした。まずはGT300クラスが30分間の計時予選へ挑む。2グループに分かれていたこれまでの予選と異なり、27台全車が同じセッションでタイムを競うということで、コース上では至る所にトラフィックが発生し、クリアラップを取るのも一苦労という状況。さらにセッション終了まで残り7分というところで「グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝選手/片岡龍也選手)」の片岡選手がコースアウトし、赤旗が出てしまう。

残り僅かでセッションが再開すると、2台のヨコハマユーザーが激しいトップ争いを展開した。まずは「リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(佐々木大樹選手/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手)」のオリベイラ選手がトップタイムをマークすると、続いて「UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章選手/ロベルト・メリ・ムンタン選手)」のメリ・ムンタン選手が逆転。翌周には再びオリベイラ選手がトップに立つが、最後にもう一度メリ・ムンタン選手が逆転し、「UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI」が今季初ポールポジションを獲得した。

続いて行われたGT500クラスの予選でも、ヨコハマタイヤユーザーが活躍。「リアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生選手/名取鉄平選手)」は、GT500ルーキーの名取選手がアタックを担当。気温10度、路面温度14度という低温の中でタイヤに十分に熱を入れると、まずは4番手タイムをマークし、翌周にさらにタイムを縮めてトップに躍り出た。

ラストアタックでは残念ながらタイム更新はならなかったが、「リアライズコーポレーション ADVAN Z」が今季初のポールポジションを獲得。名取選手は自身初ポールポジション獲得となった。阪口晴南選手がアタックした「WedsSport ADVAN GR Supra (国本雄資選手/阪口晴南選手)」も8位とシングルグリッドから決勝レースをスタートすることとなった。

インターバルはわずか2時間半という慌ただしさで、決勝直前のウォームアップ走行が行われ、13時20分に3時間の決勝レースがスタートした。「リアライズコーポレーション ADVAN Z」は松田選手がスタートドライバーを務め、首位をキープしたままレースをリードしていく。12周目に1台にかわされ後退したが、それでもペースは良好で、2位で周回を重ねていった。

レース開始から約45分が経過したところで、フルコースイエロー(FCY)が提示される。なんと日立アステモコーナーで、「WedsSport ADVAN GR Supra」がストップしていたのだ。国本選手がスタートドライバーを務め8番手からスタートした「WedsSport ADVAN GR Supra」は、序盤で大きく順位を落としたものの、そこからはペースを上げて順位を取り戻していたが、車両にトラブルが発生し、ここでレースを終えることになった。

車両回収のためにFCYからセーフティカー(SC)ランへと切り替わり、約15分後にリスタート。レースの3分の1が経過するタイミングで「リアライズコーポレーション ADVAN Z」は1度目のピットインを行い、名取選手に交代した。フレッシュタイヤに交換したものの、そのウォームアップ過程となる第2スティントの序盤で後れを取ってしまうが、その後は上位陣に引けを取らないペースを見せて挽回して、この日3度目のSCランとなった残り1時間のところでは、周りのピットインのタイミングもあって2番手を走行。

このSCランが解除されリスタートが切られたタイミングで2度目のピットインを行い、ドライバーは名取選手のまま、再び後方からの追い上げにかかる。しかいレース終盤、4度目のSCラン中に突然駆動系トラブルが発生し、最終コーナーでストップしてしまった。予選では歓喜に沸いた「リアライズコーポレーション ADVAN Z」だったが、残念ながらチェッカーフラッグを受けることはできず。最終的なリザルトは12位となった。

GT300クラスは「UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI」がトップでスタートしたが、ペースが上がらずポジションを下げ、代わって「リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R」が2位に浮上するも、やはり徐々にポジションダウンしていった。

予選で熾烈なトップ争いを繰り広げた2台が苦戦する中、予選15位から猛追してきたのが「VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史選手/元嶋佑弥選手)」。スタートから第2スティントまでを託された元嶋選手が、ハイペースで次々とライバルたちをかわしていくと、FCYやSCが出るタイミングもピットイン戦略とぴったりはまり、3度目のSCが解除されて上位陣が最後のピット作業になだれ込んだところでトップに浮上した。

最終スティントを担当した小暮選手は、2位との差を20秒以上拡げて独走状態へ持ち込んだが、残り15分でこの日最後のSCが導入され、大量マージンは一気に消えてしまう。ただ、車両回収に時間がかかったためにレースはSC先導のままチェッカーを迎えることに。これで「VENTENY Lamborghini GT3」が今季2度目のトップチェッカーを受けた。

Drivers’ Voices

松田次生 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)

【今回の成績 : GT500クラス 12位】

決勝のスタートを担当しましたが、序盤のペースはとても良かったです。同じZの23号車はペースが良く、これは押さえきれないと譲る形になりましたが、それ以降はしっかりと後ろをおさえて走ることもできました。SCが入った後もタイヤが冷えてきつくなるかと思っていたのですがパフォーマンスが復活したので、トップに離されずについていくこともできました。ただ名取選手に変わってからは、やはりウォームアップの部分で非常に苦しく、改善していかないといけないと感じました。今回は名取選手がポールポジションを獲れたという点でも、トップでレースができたという点でもよい部分は見つかりましたが、まだまだ改善しなければいけないところがあるので、この先もヨコハマさんと、もっと事細かくいろいろな部分を突き詰めてタイヤを進化させていかないとと思っています。

名取鉄平 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)

【今回の成績 : GT500クラス 12位】

最後は駆動系のトラブルで止まってしまいました。そこまでの走りを振り返ると、タイヤが温まってしまえば悪くないペースで走れましたが、タイヤのウォームアップが遅く、今日のレース終盤のように気温や路面温度がどんどん下がってきてしまうとより厳しくなってしまいました。予選の時点で、温まればいいフィーリングだったので何とか逃げ切りたいと思っていたのですが、残念な結果になってしまいました。残り2戦も寒い中でのレースなので、今の課題を何とか改善していかなければと思います。

国本雄資 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)

【今回の成績 : GT500クラス リタイア】

第1スティントをどう戦うかを考えて選んだタイヤでしたが、ウォームアップが厳しく、1周目で大きく順位を落としてしまいました。その後はいいペースで走れたところもあり、少しずつ順位を戻すことができていましたが、途中からはトラブルを抱えながらの走行で、最終的にはステアリングが効かなくなり、マシンを止めることになりました。今回すごく寒いなかでのレースになりタイヤが温まるまでの状態で後れを取っていると感じましたが、温まってからのパフォーマンスはそこまで大きく負けてはいないです。これから寒くなってきたところでも勝負できるようなタイヤを開発して、今後に活かしたいです。今回は最後まで走れず残念なレースウィークになりましたが、残り2戦あるので、そこでしっかりと力強いレースを見せられるように頑張ります。

阪口晴南 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)

【今回の成績 : GT500クラス リタイア】

タイヤの温まりが悪くピークを出しづらい状態での予選だったかなと思います。8番手からのスタートでしたが、この時期のウォームアップに課題があり、そこで順位を下げてしまう形になりました。中盤からは安定していたとは思いますがトラブルが出てしまい、残念な結果になりました。次戦はすぐ2週間後で、季節としては近い状態ですがコースのキャラクターが全く違うので、また気持ちを切り替え、もてぎにしっかりと合わせられるように頑張りたいと思います。

小暮卓史 選手 (VENTENY Lamborghini GT3)

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】

まずは予選を担当しましたが、アタックをしながら遅いクルマを抜かなくてはいけない状況で、非常に大変でした。自分たちがアタックに出たタイミングも良くなく、前を走るクルマとの距離をあけようとしたことで残り時間も無くなってしまい、不完全燃焼な予選になってしまいました。ただ決勝に関してはタイヤとのマッチングも良くてパフォーマンスを発揮してもらいましたし、なにより元嶋選手がとても速かったです。次戦のもてぎは昨年優勝したサーキットなので、今年もそれを再現したいですね。

元嶋佑弥 選手 (VENTENY Lamborghini GT3)

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】

15番グリッドからのスタートでまさか勝てるとは思いませんでしたが、個人的には地元九州でのレースだったので、優勝できてとてもうれしいです。オートポリスに対しては、これまであまり上手く走れずに良い印象がなかったのですが、今回はタイヤとクルマがうまくマッチしていたので、チームもすごく落ち着いてコースに送り出してくれて、自分たちは勝てるときにちゃんと勝てるチームになったんだなと実感し、ほっとした気持ちが大きいです。次戦のもてぎも優勝あるのみだと思っています。

Engineer’s Voice

白石貴之 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ・リーダー]

温度域としては想定下限、またそれをやや下回る位でした。タイヤのグリップについてはある事は判っていましたが、時間が掛かってしまう事が懸念だったので結果的には予選のフォーマット変更で救われた形と思っています。

「リアライズコーポレーション ADVAN Z」については第1スティントは序盤苦戦したものの後半は他車に追従する事も出来ており、全体的な走行中のペースは悪くなかったと思っています。「WedsSport ADVAN GR Supra」はタイヤの持ち込みが「リアライズコーポレーション ADVAN Z」と異なっていた事もあり、第1スティントのタイヤは決勝のコンディションに合ったとは言えず、最適なタイヤを提供できなかったのが反省材料です。第2スティント以降では別のSPECを確認したいと思っていましたが、そこの確認が出来なかったのは残念です。

GT300クラスは「VENTENY Lamborghini GT3」が決勝でも良いペースを発揮して優勝を飾ってくれましたが、レースペースとしては全体的に後半のタイムダウンが大きい車両が多く、低温化でのピックアップに苦戦したことが要因と思っています。天候だけでなくコース特有の問題もあり対策は簡単では無いですが、来年に向けた取り組みです。

次戦のもてぎは、GT500/300共に比較的好成績を収めているサーキットであり、相性は悪くありません。サクセスウェイトも半分で望める事は例年に比べると好材料ですので、GT500は挽回できるよう、GT300は昨年及び今回に引き続き良い結果を出せる様に取り組んでいきます。

Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)

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