【SUPER GT 第5戦 / 鈴鹿サーキット】
ポール・トゥ・ウィンでシーズン4勝目を挙げたVENTENY Lamborghini GT3が、ドライバー/チームの両部門でシリーズチャンピオンに輝いた!!
SUPER GT Round 5
開催日 | 2024年8月31日-9月1日 |
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開催場所 | 鈴鹿サーキット (三重県) |
天候 | 決勝 : 晴れ、公式予選 : 晴れ |
路面 | 決勝 : ドライ、公式予選 : ドライ |
決勝時間 | 51周 (1周=5,807m) |
参加台数 | 42台 (ヨコハマタイヤ装着車 17台) |
2024年のSUPER GTは、8月下旬に開催予定だった第5戦の鈴鹿大会が台風接近により順延され、12月7日(土)、8日(日)に事実上のシーズンの最終戦として開催された。
前身の全日本GT選手権時代を含めて、SUPER GTの国内シリーズ戦としては初めての12月開催という異例の時期となり、レース距離は当初の350kmから300kmに短縮、寒さを考慮して公式予選セッションの時間が延長され、またフォーメーションラップも1周追加になるなどの対応がなされた。
このシーズン最終戦を前に、GT300クラスでは「VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史選手/元嶋佑弥選手)」がポイントリーダーに11点差の2位。相手の結果次第でもあるが、予選でトップ3に入り、決勝でも表彰台圏内でフィニッシュすれば逆転でタイトルを獲得できるという状況だ。
予選に先立って7日の午前中に行われた公式練習は、気温11度、路面温度は13度というコンディションでスタート。日差しは出ていたものの、チェッカーのタイミングで気温14度、路面温度も19度までしか上がらなかった。「VENTENY Lamborghini GT3」は3番手タイムをマークし上々の滑り出し。GT500クラスは「リアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生選手/名取鉄平選手)」が9位。「WedsSport ADVAN GR Supra (国本雄資選手/阪口晴南選手)」が11位という結果だった。
この日は冬晴れの日差しが強く降り注いでいたこともあって、お昼にかけて路面温度は上昇。公式予選が始まる時点で、気温は14度と公式練習時と変わらないものの、路面温度は26度まで上昇していた。GT300クラスよりも車重が軽く、タイヤのウォームアップが難しいことを考慮し、今大会はGT500クラスから予選セッションが行われた。
Q1は、「リアライズコーポレーション ADVAN Z」は名取選手、「WedsSport ADVAN GR Supra」は国本選手が担当。前戦オートポリス大会でもセッショントップタイムでポールポジションを獲得している名取選手には、今回もその走りに期待がかかっていたが、入念にタイヤを温めてからのアタックでたたき出したタイムは、従来のコースレコードを上回る1分43秒670。堂々のトップタイムをマークした。国本選手は1分44秒526で9番手。
Q2では各車のタイムがさらに上がり、残念ながら名取選手のタイムは破られてしまったが、松田選手が1分43秒935をマークし、合算タイムでの予選結果は4位。「WedsSport ADVAN GR Supra」も阪口選手が1分43秒888という好タイムを記録して予選結果は7位となった。なお、上位の車両にグリッド降格のペナルティが出され、決勝レースはそれぞれ3番グリッド、6番グリッドからのスタートとなった。
GT300クラスの予選は、「VENTENY Lamborghini GT3」が午前中の好調ぶりをさらに加速させた。Q1は小暮選手が出走し、1分55秒132でトップタイム。続くQ2は元嶋選手が1分55秒206で2番手となり、合算タイムでポールポジションを獲得した。これでシリーズポイントも3点を加算。ランキングトップ車両は予選10位という結果だったため、ここでポイント差を8ポイントまで縮めることに成功。シリーズタイトルを大きく引き寄せる結果となった。
Q2では同じヨコハマタイヤユーザーの「リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(佐々木大樹選手/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手)」が驚くべき速さを見せた。オリベイラ選手がマークしたタイムは、従来のコースレコードを約0.4秒上回る1分55秒092。これでオリベイラ選手と日産GT-R、ヨコハマタイヤが新たなレコードホルダーとなり、「リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R」の予選結果は5位となった。>
一夜明けた決勝日は、前日と比べるとやや雲が多く、日差しも弱かったことから一段と冷え込みを感じる陽気に。それでも多くのファンが決勝直前の緊張感高まるグリッドの様子を楽しめるグリッドウォークなどを行っている間に寒さは少し和らぎ、気温15度、路面温度22度というコンディションで、いよいよ今シーズン最後のレースがスタートした。>
元嶋選手がスタートドライバーを務めた「VENTENY Lamborghini GT3」は、順調な走り出しでレースをリードし、後続とのギャップもじわじわと拡げていくと、18周を終えるところでピットイン。チャンピオン争いのライバルはタイヤの無交換作戦で作業時間を削ってくる中、「VENTENY Lamborghini GT3」はリヤタイヤ2本を交換し、暫定8番手から後半スティントを開始した。
この時点で、ランキングトップ車両はすでにピット作業を済ませ暫定9番手。ランキング3位車両は25周を終えるところまでピットインのタイミングを伸ばし、こちらもタイヤ無交換作戦で「VENTENY Lamborghini GT3」よりも前でコース復帰に成功する。さらにもう1台、同じくタイヤを替えずにポジションアップした車両がいることで、全車ピット作業を終えて順位が整理されたところでは、「VENTENY Lamborghini GT3」は3番手となっていた。
しかしここから、小暮選手の快進撃が始まった。好ペースで少しずつ前に追いついていくと、途中、フルコースイエロー(FCY)が出たことも味方につけ、再開後の33周目には2番手の車両に急接近。34周目に入ったホームストレートで並びかけ、1コーナーでオーバーテイクすると、さらにトップの車両にも秒単位で近づいて行き、39周目のホームストレートでついに首位に返り咲いた。小暮選手の勢いは止まらず、ここからさらに後続とのギャップを拡げていき、最終的に2位に9秒もの大差を築いてトップチェッカー。驚愕の3連勝を果たして見せた。
ポール・トゥ・ウィンで23ポイントを手に入れた「VENTENY Lamborghini GT3」は、あとはランキングトップの車両が何位でゴールするかを待つだけ。その相手が4番手でチェッカーを迎えた瞬間、逆転でシリーズタイトル獲得が決定、8戦中4勝と言う強さを見せつけた。元嶋選手は自身初、小暮選手はGT300クラスで初、そして全日本GT選手権時代から数えて参戦30年目にしてチームも初めてのシリーズチャンピオンを獲得することとなった。
GT500クラスは、「リアライズコーポレーション ADVAN Z」が名取選手、「WedsSport ADVAN GR Supra」が国本選手でレースをスタート。タイヤが温まり切っていない序盤の数周でポジションを下げてしまったものの、名取選手はペースを取り戻してからはファステストラップを記録しライバル勢を次々に追い抜いていく高いパフォーマンスを見せた。
名取選手からバトンを受け取った松田選手も粘り強い走りでゴールを目指したが、終盤にタイヤ交換を行うことになり、15位でチェッカーを受けた。「WedsSport ADVAN GR Supra」は後半スティントの阪口選手が名取選手に迫るベストタイムをマークしピークパフォーマンスの高さを示したが、ペースとしては苦しい状況に。それでも最後まで前を走る車両を追い詰め、14位でチェッカーを受けた。
Drivers’ Voices
小暮卓史 選手 (VENTENY Lamborghini GT3)
【今回の成績 : GT300クラス 優勝 (シリーズチャンピオン)】
元嶋選手がマージンを作ってくれたおかげで、タイトル争いしている相手との勝負としてはかなり有利になりました。タイヤを替えている分アウトラップは注意しないといけない状況でしたが、そのウォームアップが良かったことと、元嶋選手が作ってくれたマージンがあったことが大きかったですね。また、タイヤを交換していた分周りに対しても余力があったので2台をパスできました。GT300クラスはGT500クラスとは違った難しさがあり、その時のコース、マシン、タイヤのすべてが合致しないと勝てないというところがあります。そんななか苦労した時間は長かったですが、昨年の最終戦で勝てたところから流れが一気によくなりました。チームもレベルアップしたし、みんなで何年も積み上げてきたものが一気に花開いたような、そんなシーズンになりました。チャンピオンはとてもうれしいです。
元嶋佑弥 選手 (VENTENY Lamborghini GT3)
【今回の成績 : GT300クラス 優勝 (シリーズチャンピオン)】
今回の様に路面温度が低い中でスタートすることはなかなかないのですが、ヨコハマタイヤのウォームアップも良く、またフォーメーションラップが2周になったことにも助けられて序盤でリードを作ることができました。このチームに入ってから8年目、時間はかかりましたがまずは昨年の最終戦でようやく勝ててホッとしたところから、こんなに早くチャンピオンに届くとは思っていませんでした。チームにもようやく少し恩返しできたかなと思いますが、これから先も、もっともっとレースに集中して頑張っていきたいです。
国本雄資 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績 : GT500クラス 14位】
12月の鈴鹿サーキットという条件に対してマッチしたタイヤがテストでは見つからず、試したことのないタイヤで戦うことになりましたが、予選では思った以上尾のパフォーマンスを見せることができました。ウォームアップ性能を重視して作ってきたタイヤなので、レース序盤も他社より高いぱふぉ0万巣を感じることができましたが、そのあとはピックアップの症状が苦しかったです。今年は課題の多いシーズンで、全体的なパフォーマンスをアップさせるところに届かず、悔しいレースが多かったです。見つかったものは多いので、オフシーズンにしっかりとこの課題に取り組んで、結果につなげられるよう頑張っていきたいです。
阪口晴南 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績 : GT500クラス 14位】
国本選手のスティントは、タイヤの温まり自体は良かったのですがピックアップの症状でペースが下がってしまい、それは僕のスティントでも同様でした。ピークはあったものの、ピックアップがつらかったです。ウォームアップ性能など収穫もありましたが、トータルとしては他車を上回るようなペースが出せず残念でした。今年は厳しいレースが多かったし、天候や運に恵まれないレースも続きました。悔しいシーズンでしたが、これをばねに来年以降も頑張っていきたいです。
松田次生 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績 : GT500クラス 15位】
前の車両に追いついていけるところもありましたが、最終的にはピットに入ってタイヤを交換せざるを得ず、苦しいレースになりました。タイヤがグリップし始めてからのパフォーマンスはすごく良かったので、いいところは伸ばしつつ、悪いところを改善できれば、光は見えてきていると感じています。ここから先もタイヤのパフォーマンスアップを目指してみんなで頑張っていきたいと思っています。ヨコハマタイヤと初めて組んだ今シーズンはタフな1年でしたが、最終戦ではノーウェイトで3番グリッドを得られるレベルに来ました。向上して終えることができたという意味ではいいシーズンにできたのではと思っています。
名取鉄平 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績 : GT500クラス 15位】
非常に寒い時期のレースなので、ウォームアップが厳しいだろうという想定で臨みましたが、その予想通りに走り出しは苦しかったです。ただタイヤに熱が入ってからは速いペースで追い上げていけて、ライバルたちを抜いて行けたので、いいパフォーマンスは見せられたと思います。今シーズンは天候の関係で暑い時期にレースができなかったことが残念ですが、オートポリスでポールポジションを獲れたり、もてぎや今回の鈴鹿大会では追い上げるレースもできたので、自分自身の成長は見せられたかなと思っています。
Engineer’s Voice
白石貴之 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ・リーダー]
「WedsSport ADVAN GR Supra」向けはウォームアップ性重視、「リアライズコーポレーション ADVAN Z」はスタビリティ重視と、異なる考え方のタイヤを持ち込みましたが、結果的にはそれぞれで課題が出てしまいました。今年後半からコンパウンドで新しい取り組みをしている為にまだ適正なレンジの見極めが十分ではありません。両チームともレース中に良いラップがあり、特に「リアライズコーポレーション ADVAN Z」は平均ラップタイムも悪くない部分があったのは好材料と考えています。トータルバランスの課題はセパンをはじめとしたオフシーズンテストでしっかりと見極め出来る様に進めていきます。
「VENTENY Lamborghini GT3」向けの持ち込みは低温側は鈴鹿サーキットでは未確認のものでしたが、ウォームアップ、後半の持ちのいずれもコンディションにあったものを提供できたので良かったと思います。Rd.3鈴鹿ではあまりコンディションに合ったタイヤを提供できなかったので、そういう意味では今回の構造、コンパウンドいずれも上手く行きましたが、やはり当社のタイヤをシーズン通して上手に使って頂いたチームさんの実力には頭が下がります。レース中は他車の無交換作戦で一時厳しいかと思われるような状況もありましたが、ドライバーさんやチームさんの頑張りでシリーズチャンピオンを獲得したことは、本当に素晴らしいと思います。
Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)