【SUPER GT 第7戦 / オートポリス】
低めの気温で迎えたオートポリスラウンド決勝、GT300クラスはタイヤ交換1回とスプラッシュ給油のリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rが大幅ポジションアップで5位フィニッシュ!!
SUPER GT Round 7
開催日 | 2023年10月14日-15日 |
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開催場所 | オートポリス (大分県) |
天候 | 決勝 : 曇り 時々 晴れ、公式予選 : 曇り |
路面 | 決勝 : ドライ、公式予選 : ドライ |
決勝距離 | 97周 (1周=4,674m) |
参加台数 | 40台 (ヨコハマタイヤ装着車 16台) |
2023年のSUPER GTも、残るは2戦。九州は大分県のオートポリスで開催される第7戦は、サクセスウェイトが獲得ポイント×1に半減される。
GT500クラスは、第3戦鈴鹿大会で優勝を飾った「WedsSport ADVAN GR Supra」がここまで苦しめられてきたウェイトから解放され、本来の力を発揮できそうだ。GT500クラスのもう1台、「リアライズコーポレーション ADVAN Z」も、このオートポリスは昨年ポールポジションを獲得し決勝でも3位入賞を果たしている、相性のいいコースなだけに、これまで随所で見せている速さを結果に結び付けたい。GT300クラスは14台が参戦。ランキング2位の「UPGARAGE NSX GT3」はサクセスウェイトが60kg、同4位の「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」は59kgとハイウェイトを積んでの戦いとなる。
好天が予報されていたレースウィークだが、予選日の朝は曇り空。早朝に雨が降った影響で路面は濡れており、午前中に行われた公式練習は、序盤はコースコンディションの回復をピットで待つ車両もあった。気温16度、路面温度18度と肌寒さを感じるような天候だったが、徐々に路面が乾いてくると各車両がコースイン。午後の予選に向けて積極的に走行を重ねていった。
予選のシミュレーションとなる各クラス専有走行では、GT300クラスは「JLOC ランボルギーニ GT3」が4位、「グッドスマイル 初音ミク AMG」が5位に並び好調さを披露。GT500クラスは、アタック中の1台がコースオフしコースサイドに激しくヒット、クラッシュしてしまったことから赤旗が出され、そのままセッション終了に。予選に向けた最後のシミュレーションができない車両も多く、予選の行方は未知のものとなる。
上空の雲は晴れることなく、路面温度は25度まで上がったものの気温は16度という肌寒いコンディションで、公式予選がスタートした。まずはGT300クラスのQ1A組から。このA組には8台のヨコハマユーザーが出走。公式練習で好調な様子を見せた「グッドスマイル 初音ミク AMG」が谷口信輝選手のアタックで4番手タイムを記録しヨコハマユーザー最上位に着けると、「ANEST IWATA Racing RC F GT3」、「JLOC ランボルギーニ GT3」の計3台がQ2へと駒を進めた。ウェイトを背負いながらも予選、決勝でポテンシャルを発揮してきた「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」にもQ2進出の期待はかかっていたが、名取鉄平選手の果敢なアタックはQ2進出圏内の8番手にわずか0.053秒届かず、ここで予選を終えることとなった。
続くQ1B組は、12台中6台がヨコハマユーザー。この組で速さを見せたのは、前戦SUGO大会で劇的なトップチェッカーを受けたものの、レース後の車検で失格となってしまった「UPGARAGE NSX GT3」。雪辱の1戦となる今大会には並々ならぬ決意を持って臨んでいたが、Q1を担当した小出峻選手は3番手と好タイムをたたき出してQ1をクリア。小林崇志選手にしっかりとバトンを渡すことに成功した。他、「Bamboo Airways ランボルギーニ GT3」と「Yogibo NSX GT3」もQ1を突破し、ヨコハマユーザーは計6台がポールポジション争いに進出する。
Q2はライバル勢がコースレコード更新という驚きの速さを見せ、ヨコハマユーザーのトップタイム獲得はならなかったものの、片岡龍也選手がアタックした「グッドスマイル 初音ミク AMG」がFIA GT3勢としても最上位の5位を獲得。「JLOC ランボルギーニ GT3」が6位に並び、3列目から表彰台争いを目指す形となった。
GT500クラスの予選は、2台明暗が分かれる結果となった。Q2進出のトップ8をかけて争われるQ1は、佐々木大樹選手が果敢なアタックを見せた「リアライズコーポレーション ADVAN Z」はQ1突破に0.2秒届かず、決勝レースは11番グリッドからのスタートが決定。「WedsSport ADVAN GR Supra」は「フリープラクティスからクルマを見直したらいい方向に進みました」という国本雄資選手が5番手タイムをたたき出しQ2に進出すると、バトンを託された阪口晴南選手がさらにタイム更新を果たして2番手に浮上。コースレコードのトップタイムには届かなかったが、1列目から450kmの決勝レースに臨むこととなった。
一夜明けたオートポリスも相変わらずの寒さ。風も強く、決勝レースがスタートする時点では気温15度、路面温度は24度と、予選とそれほど変わらないコンディションで97周の戦いが始まった。国本選手がスタートドライバーを務める「WedsSport ADVAN GR Supra」はやや出遅れ1コーナーで1台にかわされてしまう。
3位に下がった後も4位の車両につつかれる展開となるが、経験豊富な国本選手はなんとかポジションを死守。しかし6周目の第2ヘアピン手前でアウト側に並びかけられると、コーナー入り口で逆転を許してしまった。4位に後退した国本選手に、続々と後続車両が襲い掛かる。翌7周目には数珠つなぎで迫ってきた車両に一気にかわされ、12位にまでポジションダウン。これ以上はもたないと、チームは7周を終えるところで車両をピットインさせタイヤ交換を行った。
97周のレースで、まだ10分の1にも満たない距離でのタイヤ交換を余儀なくされた「WedsSport ADVAN GR Supra」は、改めて後方から追い上げを目指す展開となる。この頃にはGT300クラスの車両がバックマーカーとして現れはじめ、「WedsSport ADVAN GR Supra」は時に走行ラインを変えて周回遅れの車両をかわしていくようになるが、今度は走行ライン外に落ちているタイヤかすを拾ってしまうピックアップという症状に悩まされるように。
国本選手は苦しい状況の中で、ドライバーの規定周回数ぎりぎりの33周を終えピットへ。残り64周のロングスティントを阪口選手が担当することとなるが、やはりペースが上がらずに49周終了時点で3度目のピットインを行い、別のタイヤに履き替えてコースに復帰。ライバル勢よりピット回数が多かったことも影響し、最終的にトップから2周遅れの13位でのチェッカーとなった。
後方スタートの「リアライズコーポレーション ADVAN Z」も同じような展開で、スタートドライバーの佐々木選手は8周終了時点で最初のタイヤ交換。このタイヤがパフォーマンスを発揮し、「リアライズコーポレーション ADVAN Z」はペース良く前方とのギャップを縮めていった。他車のピットタイミングも関係はするものの、6番手までポジションを上げた56周終了のところでドライバー交代。後半の平手選手の走りにも期待がかかったが、10周にも満たないところで再びタイヤ交換を行うことに。
SUPER GTでは使用できるタイヤのセット数に制限が設けられている上に、どのようなコンディションになっても対応できるよう数種類のタイヤを持ち込むため、佐々木選手が履いていたものと同じ仕様のタイヤがなかったのだ。苦しい状況の中、結果的に自身のスティント約40周の中で2度のタイヤ交換を余儀なくされた平手選手。「リアライズコーポレーション ADVAN Z」は計4度のピットインで2周遅れの12位チェッカーとなった。
GT300クラスは、予選で上位を占めたライバル勢が決勝でもリードを広げていったが、「グッドスマイル 初音ミク AMG」が粘り強くその背後に貼りついていた。スタートドライバーの片岡選手はロングスティントの61周を走破。ピット作業もスムーズで、見た目上9番手で戦列に復帰した。
しかしこの時点で、まだピット作業を終えていない車両を除き、事実上の5番手にいたのは「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」。スタートドライバーの名取選手が45周まで自らのスティントを引っ張ると、代わったJ.P.デ・オリベイラ選手がわずか2周でピットに戻り、スプラッシュ給油でコースに戻っていたのだ。タイヤ交換は1回のみ、義務付けられている給油作業を最低限に抑える作戦で、17番グリッドスタートから驚異の追い上げを見せていた。
「グッドスマイル 初音ミク AMG」の後半を担当する谷口選手は1台をコース上でかわして「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」の背後に着く。終盤の20周は谷口選手とオリベイラ選手の息詰まる接近戦が続いたが、最後までポジションを守り切った「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」が先行し5位でチェッカー。驚きの12台抜きの結果となった。
Drivers’ Voices
佐々木大樹 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績 : GT500クラス 12位】
予選は日産勢としても苦しい部分がありましたが、自分たちは温度が低いところに苦手な部分もありました。それは予選だけでなく決勝の最初もそうで、厳しい始まりでしたが、2スティント目で履いたタイヤはペースも良く追い上げて行けました。ただ持ち込みの本数が決まっていて同じタイヤがなかったので、それがあればもっといいレースができていたし、上位争いにも加われていたかもしれません。同じように寒い中での戦いになる最終戦に向けてもいい収穫はあったので、サクセスウェイトに関係なく速さを見せられるもてぎ大会では、いいタイヤを選べていいタイヤを用意できて、自分たちがいいドライビングをすればチャンスはあると思うので頑張りたいと思います。
平手晃平 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績 : GT500クラス 12位】
僕のスティントでは、佐々木選手のスティントで履いていたいいタイヤがなくなってしまったことと、コンディションも良くなってこなかったことで、ベストは尽くしたものの厳しい結果になってしまいました。ただ、佐々木選手が履いたタイヤが僕たちの想定よりもいいパフォーマンスを見せてくれたのは大きな収穫でした。最終戦は、今シーズン1年かけていろいろとタイヤ開発してきたもの、自分達が持っているすべてをまずは予選にぶつけ、決勝もしっかりと走り切って何とか表彰台に乗って、いい形でシーズンを締めくくれるように頑張っていきたいです。
国本雄資 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績 : GT500クラス 13位】
自分たちの想定よりも気温も路面温度も上がらず、ウォームアップが悪かったことでかなりギャップを広げられてしまいました。最初からかなりペースコントロールしましたが、10周もしないうちにピットに入らないといけない状況になってしまって。違うコンパウンドのタイヤも履きましたが、今度はピックアップ症状に悩まされ、全く戦うことができず非常に残念なレースになってしまいました。この課題をしっかりつぶして、最終戦はいいレースでシーズンを終えられるようにしたいです。
阪口晴南 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績 : GT500クラス 13位】
去年のオートポリス大会は1年の中でも一番レースペースが良かったので今回も期待して臨みましたが、あの時と路面温度が10数度下がってしまうと全く状況が変わってしまいました。結果的に3ピットとなり、厳しかったです。最終戦のもてぎも温度は低いと思うので、ウォームアップ性能にしてもピックアップに対しても、今回の反省も踏まえて改善していかないと、レースでは出遅れてしまうと思います。なんとかいい形で締めくくるためにも、しっかりとミーティングを重ねてシーズン最終戦に挑みたいと思います。
J.P.デ・オリベイラ 選手 (リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)
【今回の成績 : GT300クラス 5位】
17位スタートとなった今回は、周りと違うストラテジーが必要でした。タイヤ交換は1回で、ロングスティントにトライしましたが、非常にいい作戦だったと思います。JAF-GT(現GT300車両規定)勢が上位を占めましたが、FIA GT3勢としては最上位の結果を得ることができました。ロングランができたタイヤのパフォーマンス、チームワーク、そして名取選手の走りがこの結果につながったと思います。
名取鉄平 選手 (リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)
【今回の成績 : GT300クラス 5位】
今回使用したタイヤは新しいものだったので、正直データがないところもあったのですが、作戦的にはいけるところまで行こうというものになりました。ペースもずっと安定して走れたので、いくつか想定していた作戦パターンの中では決してメインではない作戦でしたが、結果として大幅にポジションを上げてポイント獲得できたのは良かったです。残念ながらチャンピオン争いに残ることはできませんでしたが、最終戦でもう1勝できたらいいなと思っています。
Engineer’s Voice
白石貴之 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ・リーダー]
去年のオートポリスは気温も路面温度も高く、その時にいい結果だったということを少し引きずってしまったところがあります。もちろん低温側についても考慮はしていましたが、比較的もう少し温度帯域は上がるだろうという予想がGT500クラスの2台ともにありました。しかしいざレースウィークに入ってみると予選日も決勝日もずっと低温で、それに向けた準備が少し足りなかったというのが反省点です。そんな中でも19号車は、予選ではグリップを出していただけたと思っています。
最終戦のもてぎも季節が進んで寒い中での戦いになることが予想されますから、今回の結果をベースに対策を盛り込んでいきます。
GT300クラスは、56号車が大幅にポジションアップを果たしましたが、このチームは比較的タイヤを長く使って安定して走ることができる、一発というよりもレース全体を見据えたチームの戦略が優れていると思っています。今回も我々のタイヤをうまく使っていただけたなと感じました。
Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)